高間三郎様レクチャ+コンセプト発表
5/9(木)のスタジオ内容です。
本日は高間三郎様のレクチャの後、M1・B4のコンセプト発表が行われました。
まず始めに高間様のレクチャです。
B4テーマ発表+M1熱課題の発表
5月7日(火)、本日のスタジオは以下のような内容でした。
・スケッチアップを使った周辺モデルの簡易作成法の紹介
・B4テーマ発表
・M1熱課題の発表
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□スケッチアップを使った周辺モデルの簡易作成法
配布したDXFファイルをスケッチアップにインポートし、ボリュームを立ち上げる方法についてレクチャしました。
make faces というツールを使い、インポートした線データに面を貼ることができます。
そこから街区のボリュームを一気に生成する方法、等高線のデータから地形を作成する方法も説明しました。
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□B4テーマ発表
能上さん
小学校をつくりたい。周辺の施設を巻き込む計画を考えており、候補を考えてきた。
小学校の機能を分解して考えたとき、理科室、家庭科室など特別な機能を持った部屋があるため、それを周辺に開放して、土日も運営する学校を考えたい。
→エスキス
・土日にも開放している小学校は既にあるので、事例を調べたらよい
・小学校の機能をどうやっって地域に開くか、それとセキュリティの両立をどうするかは今盛んに議論されているはず。
・プレゼンは見る者の想像を駆り立てることが必要なので、そういったビジュアルをつくるよう意識するとよい。
孟さん
今回は島全体の観光機能を考えてきた。
自転車とバスで一周まわれるような計画とする。
自然をできるだけ活かすために人工物をできるだけつくらないという方針をとる。
→エスキス
・写真などをもっとパネルに載せた方がよい
・島に関するデータをもっと集めたほうがよい。局所局所のデータを詳細に集め、マップに反映させる
・毎回毎回デザインを出すように意識すること
・ビジュアルの作りかたを、コンペ案などを参考に勉強するとよい。まちづくりや、島に対する提案の例を探してみる。
山本くん
前回の気候分析で、弱い風が断続的に吹いていることがわかった。
今回は以下の仮説に基づいた形の提案を考えてきた。
仮説 地表面では戸建てがみっしり建っているため弱い風が吹いているのではないか
提案 戸建て住宅が並んでいるところの一部を持ち上げて間引くという空間操作
住宅群+立体公園というプログラムを考えている。
低密として風をよく通し、上空の冷たい風を地表面に導くことを考える
→エスキス
・上空でどのような風速分布となっているか→べき乗則の計算でわかる
・気象データの分析では、伊吹おろしは広域で弱い風が吹いている状態である。
強い風が流れている前提で形を考えているように見えるが、一帯に吹く弱い風を利用する形は違ってくるのではないか。
・伊吹おろしはライフスタイルにどう関わってくるのか
・現地の人の職業などもリサーチするとよい
矢吹くん
現在は風の解析を進めている。
社会的要求などは取り合えず考えずに形を操作して、風のシミュレーションをかけてみることと、社会的な要求をリサーチする、ということを並行して進めている
外部風の解析に関して
直方体モデル ベランダ付きモデルの解析を行った。
室内風の解析に関して
片廊下型3LDK
風の通り道が廊下沿いにできている。
開口部がない部屋は全く風が通らない。
住民の抱える問題に関して
リサーチから、3世代以上が協力する必要性を感じる
子育て世帯、老夫婦世帯、単身世帯を組み合わせることを提案に組み込みたい。
→エスキス
・いろいろなシミュレーションをかけているが、それぞれに対する分析がないのでは
・どういうスケールで提案すると提案の自由度が高くなるのかなどをにらみつつ、そろそろ提案を絞っていったほうがよい。
・スタディの全体像を示していないため、これからの伸びしろが予測しにくい。初めに仮説を立て、それに応じてシミュレーションをかけていくということが必要。
・もっと思い切った形を網羅的にスタディしたほうがいいのではないか。
・片廊下型を選ぶ理由が必要。
・木曜日までには、マンションのボリュームを使った諸々のプログラムに対して
形の提案を作ってくるとよい。
一杉くん
二つ提案を考えてきた。
一つは以前のように、斜面地に埋め込むように建築を考える案。
土砂崩れを防ぐ、冷たい空気を都市空間に放つなどが可能となると思う。
もう一つに関しては、火葬場+都市公園/集会施設を考えている。
迷惑施設となってしまい敬遠されている現状と多量のエネルギーを使用している施設でもある。火葬場のエネルギーを他のことにも使えたらよい。
→エスキス
・ダイアグラム以上のことをそろそろ考えた方がいいのでは?
・敷地としてこういう斜面地が見つかりそうか→例:保土ヶ谷、田園調布、赤羽
・崖の上と下で、住んでいる人々も全くことなるような場所もある。
・もともとは、小さいものが集まったときの状態を考えるということだったように思うが、火葬場だとこれ一軒で終わってしまう。それでいいのか。
・公共施設でやるなら複数のプログラムを組み合わせるほうがいいのではないか。
・熱を集めることでスケールメリットを稼げる、という提案の方向性。
・斜面地、擁壁のあり方となったとき、どういう人が住まうのかということも同時に考えた方が良い。
・これからの進め方としては、敷地を見つける→コンプレックスの提案を考える→シンプルにボリュームのスタディをする→シミュレーションをかける
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□M1テーマ発表
米澤くん
壁の厚さに傾斜をつけた場合、壁を厚くした場合薄くした場合に関して熱のシミュレーションを進めた。
コンクリート壁で考えると予想通りの結果としかならかったため、ガラス壁でシミュレーションを進めた。
ガラスの厚さを増すことを、ガラスを入れ子状にすることに置き換え、ガラスの入れ子モデルを作成した。たとえば15枚で重ねたモデルは、日射の透過率を90%とすると0.9の15乗で、2割程度まで減衰する。
→エスキス
・きれいなレンダリングを作成できそう。
・ガラスを何層まで重ねるか、どこで打ち切るのがよいか見定めないと行けない
・ガラスを重ねる枚数とその間隔をパラメータとしてスタディを進めるといいのではないか。
・大きなビルのようなスケールで提案してみてもいいのではないか。
・冬もシミュレーションを回してみるとよい。
富山くん
これまでのスタディをまとめて整理した。
熱のスタディに関しては、ボックスがある密度で集合しているときに蓄熱し、熱交換するようなモデルを考え熱容量をパラメータとして考える。
夏は風を取り入れ冬は風を防ぐような形を考えると、外周部の密度を変えた方がいいのではないか。
→エスキス
・そろそろ建築にどう落とすか考えるとよい。
・熱的なところより、風を深めた方がおもしろい提案となるのではないか
・プレゼンに掲げているテーマもわかりづらいため、端的になにをやりたいのかまとめるとよい。
小松くん
屋根の振る舞いを考え直そうと思う。
日射積算量の分布をシミュレーションで進めている。
一つの屋根をつくることで、グラデーショナルに温度が変化する環境を操作できないかと考えている。
→エスキス
・屋根の曲率を変えるか、内部空間の仕切り方を考えるかなどあり得るが、曲率はあまり大きな要素とならないのではないか。
・ライフスタイルへの提案もあるとよい。
・パターンを考える時はパラメータを絞ったモデルを作成することが大切。
・床面積を一定にするなど、スタディのルールを設けたほうが良い。
・プログラムとしては、植物などを育てる施設もあり得るのではないか。
小林さん
熱のシミュレーションを進めてきた。
初期温度が室温と同じところからスタートする場合と初めから暖かいパネルと冷たいパネルがある場合である。
パネルの間でグラデーション状に温度が変化するかと思ったが、対流の効果で思ったより均質になるようだ。
パネルの素材も、鉄、土、木を試してみた。
→エスキス
・投入熱量がモデルにより全然違うのではないか
・ムラがあまり生まれていないため、設定の確認等をしてみる
・素材に関するスタディは、熱源を埋め込むことを考えているのか→日射を熱源と考えている
・人工的に環境を作り出すのか、素材の性質を活かして環境を作り出すのか
・素材を単一に限定せず、様々な素材の組み合わせを考えてもいいのでは
大國さん
三つのモデルについてシミュレーションを進めてきた。
一つ目として、バイオミミクリーのリサーチからの発想で、V字型の壁の配置のモデル。温度むらがどう生じるのかシミュレーションしてみた。
二つ目に関して中庭型のモデルを考えた
三つ目は熱容量の違う素材を縞状に並べたモデル。
→エスキス
・日射を入れて解析すべきである。
・内部空間を閉じた方がいいのではないか。
・どういうふうに影が変化するのかといったプレゼンもあるとよい。
・V字の下側の空間を利用すると、V字の壁を屋根として見なせるようになる。
・V字型を中庭に組み込むこともできるのではないか。
・縞状のモデルは、表面の反射率などを考えた方が面白いのではないか
石綿さん
前回の課題のモデルを利用して、ソーラーチムニーの高さを変えた場合のシミュレーションを行ってきた。
建物の高さを変えることで、光環境も変わってくるのではないか。
加えて、敷地候補を考えてきた。敷地は環状8号線の近くの敷地で、石神井川沿いである。
→エスキス
・まず初めに、川の周辺のボリュームで風を効果的に曲げられるのか、そもそも示さないといけない。
・川の形状と周りのボリューム形状の関係性で、どういった風の流れが生まれるのかといった部分の方が面白くなりそう。
・石神井川の歴史についてもリサーチを進めた方がよい。
・川の選び方にストーリーが必要ではないか。
・コンセプトとして掲げているスケールと、実際に提案しているスケールに乖離があるのではないか。
・環状8号線などを挙げているが、川自体にもっと執着したほうがいいのではないか。
アリスさん
半地下状の中庭型の住居の環境に興味がある。
中庭の深さ、中庭のエッジの形状に関して風のシミュレーションを行ってきた。
単一のホールのスタディ→二つのホールとスタディを進めたが、風上のホールの風の影響が大きく出てしまうため、一気に複数のホールのコンプレックスでスタディを進めた。
→エスキス
・昨年度の林樹樹くんの設計を参照するとよい。
・ダイアグラムやドローイングを作成するべき。
・コミュニティスペースなども計画するとよいのでは。
・このまま進んでいけばおもしろくなりそう。
北潟くん
敷地を決めたため、実測を計画している。
有楽町の路地空間で、風が流れず熱だまりとなりそうなところをいくつかピックアップした。
シミュレーションとして検討することとしては、どこまでチューブを潜ったら、熱的、風的に内部と感じられるようになるのかスタディを進めようと思っている。
外部からの距離とDH比をパラメタとして考えている。
→エスキス
・プログラムも考えた方がよい。
・自分の操作を明示化することが必要。チューブをどう曲げたらどういった変化が起こるのか。
・今まで考えてきたモデルが、提案のような小さいスケールとしたときに適応できるのか
本日は以上です!
次回はここまでの課程をまとめて発表する大切な機会です。
「伝える」ということを考えて、表現の仕方から考えてみて下さい。
皆さんの発表を楽しみにしています!
熱解析CFDレクチャ2+B4テーマエスキス+M1熱課題発表
熱解析CFDレクチャ+B4テーマエスキス+M1風課題エスキス
4月30日(火)のスタジオです。
アタカケンタロウ様レクチャ+川島範久様レクチャ+M1風課題発表+B4テーマ発表
4月25日(木)のスタジオは、以下の内容でした!
・アタカケンタロウ様レクチャ
・川島範久様レクチャ
・M1風課題発表
・B4テーマ発表
□アタカケンタロウ様レクチャ「ほんとうにそうなのか、どれくらいそうなのか」
芸大益子研究室で助手をされていたころ、ヴァナキュラー建築の実測をなさっている方です。本日は、ヴァナキュラー建築を訪ねて、実際に体感・実測した経験についてお話を伺いました。
以下、内容の概略です。
・イラン 砂漠の住居
まったく開口のない住居が住居として実際に成立していることに興味を惹かれて調査した。以下3物件を調査。
物件1
日干し煉瓦でつくられた、ボールト屋根を持つ建物。
夏は中心部の空間で日中を過ごし、冬は日当たりのいい側面の部屋を使う。
季節によって居住域を変化させることから、「家庭内遊牧民」と名付けた。
実測では、外気温の変動に対して室温の変化が緩やかとなっていたことがわかった。
物件2
中庭型の住居を調査した。
下の写真のように、地下室が掘られていることが特徴。
夏の間は地下に住み、冬になると地上の日当たりの良い部屋に住むという。
・ペルー 湖上の住居
チチカカ湖の上に、草でつくった島に、草でつくった家を建てて暮らしている。
標高は3800mと、富士山より高いエリア。以下2つの物件を調査した。
物件1
トトラという植物でつくられた家。一軒一軒は小屋のように小さい。
壁は5cmの厚さがあるが、屋根はすかすかであった。
実測では、室温は外気温とほとんど変わらない推移をし、最低温度は4度程度とかなり寒かった。
物件2
物件1と同程度の標高にある、石造りの家である。
実測では、外気よりは変動が少なく熱容量の効果が伺えた。
物件1と2の比較
草と石という、全く違う素材であるが、室内温度は同程度であった。
物件1では、周囲の水の熱容量の効果で、周りの環境がある程度緩和されているのではないだろうか。
・スペイン 土中の住居
以下の2物件を調査した。
物件1
柔らかい地質を利用して掘りこんで住居をつくっている。
洞窟住居だが、内部空間は小屋のような形をしており、「建物らしくありたい」という欲求が伺える。室内は白く塗られ、光を少しでも奥に届けようという工夫。
実測では、外の増築部では外気温と同様の変動をするのに対し、洞窟の一番奥の部屋では日中23℃程度で一定であった。
物件2
崖に埋め込まれた住戸群。
オーバーハングした崖の下にファサードを挿入し、内部空間を作っている。
特徴的なのは、内部に崖の岩肌が露出していること。
物件1と対照的に、建物らしくというより、「岩に寄り添いたい」という考えが伺える。
実測では、崖下の室内温度の変動は、崖上の室内温度の変動より小さく抑えられていた。崖下の室内温度は20℃前後でほぼ一定。
・ベトナム 熱帯の住居
以下3物件を調査した。
物件1
ムオン族の民家。もともとは竹の床だったが、現在のオーナーが床や壁の一部に板を張って使っている。
実測では、室温は外気とほぼ同じような変動。
物件2
片面にほとんど開口がないため、あまり風が流れない。
室内では6台の扇風機が稼働していた。
中心に先祖をまつる祭壇があることが特徴。
実測では、室温は30℃を下回らなかった。
物件3
ホイアンの町屋。奥行きが60~70mもある。
一番奥には先祖をまつる空間があり、そこに至る通路が建物を貫く。生活の中心に祭壇があるようである。
実測では室温はほぼ30℃程度。
・4地域を訪れて
実際に行ってみて感じたのは、必ずしも我々の今の体で行っても快適ではないということ。快適と感じるレンジや、そのセンサーが現地の人と我々で異なる。
我々は空調された空間に慣れてしまっており、微妙な湿度の変化などから快適感を得るには鈍感になっていまっているように思う。
・設計課題に関して
今までの環境を重視した建物は、重視しているというのが出過ぎてしまっていると思う。それが居心地を悪くしてしまうことも。
今回の設計課題では、そのバランスを意識して設計を進めることが大切。
・質疑応答
末光先生…現地に行く前の視覚情報からのイメージと、実際に行ってみて体感した環境の差について伺いたい。また、空間のボキャブラリーに引っ張ってこれそうなアイディアはあったか。
→たとえばベトナムの住居では、風が通り抜けるような建物の写真を見て涼しそうと想像していた。実際に行ってみて、涼しいとは言えなかったが、深い庇の影は視覚的に涼しさを感じさせてもいた。
自身の設計では、環境的なアイディアをメインの構成とすることはなかったが、今少しずつ当時の経験の影響が出てきているように思う。
頭の片隅に、こういう空間になった方がいいという環境のイメージを持っている。
□川島範久様レクチャ「環境とエネルギー カリフォルニアにおけるサステイナブルデザイン」
講師の川島範久様から、バークレーでの体験についてお話をいただきました。
以下、内容の概略です。
・LOISOS+UBBELOHDE事務所について。
日本では意匠設計者と設備設計者が明確に分かれているが、
LOISOS+UBBELOHDE事務所では、設計も環境コンサルもやっている。
設計に関わる部分から仕事に入る点が大きく違う。
昔は模型実験で光環境を分析したり、コルビュジエの建物の実測をしていたこともあり、環境的な分析を長く行ってきている。
・カリフォルニアで学んできたこと
1.カリフォルニアにおけるサステイナブルデザイン手法
2.それを支える社会システム
・自身のプロジェクト
福島、徳島、沖縄でのプロジェクトでは、上記の経験を踏まえ、
まずは可視化してみることから始めた。
気象データを徹底的に可視化する。
自分の実感のある東京と比べながらそれぞれの気候を分析。
気候にうまく対応している現代建築のリサーチも同時に行った。
勝手に想像する前に、まずは客観的に可視化してみるということが大事。
自分の身体感覚を拡張するために気候の分析ソフトは非常に有用。
・なぜアメリカ、カリフォルニア、バークレーか
カリフォルニアの一人当たりのエネルギー消費は1973年から横ばいである。
カリフォルニアでは、最先端の技術をどうやって市民に届けるかということが常に考えられてきた。
そして、それを支える社会システムが存在する。
例:デカップリング制度 電力会社が発電量を減らすほど儲かる仕組み
例:法令化されている title 24
例:LEED ブランディングとしても役立つ
例:AIA建築賞 シミュレーション結果とセットでないと応募できない
社会全体でエネルギーを考える体勢づくりをしている。
・快適性とは
難波先生は、「建築家が物理的・身体的な快適性にあまり興味を惹かれないのは、共有感の弱さにあるのではないかと思う。」と述べている。
http://10plus1.jp/monthly/2012/09/post-55.php
快適とは何か、深く考えなければならない。
・どのような新しく豊かなライフスタイルを、どのように少ないエネルギーで実現できるか。
環境を二つに分けて捉える
ポリティカルコレクトな快適性
クリエイティブな快適性
都市システムの再考
都心と郊外、職場と住宅の快適性、交通
ヒューマンビヘイビアの再考
そもそもの働き方、暮らし方
・質疑応答
矢吹くん…ポリティカルコレクトネスな快適性、人間的な快適性など快適性にはいろいろあるが、それらをどう扱うのか。
可視化するという科学と、どうジャッジするかという側面がある。
ジャッジの仕方は人間次第ではないか。価値観次第であると思う。
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□M1風課題発表
つづいて、M1が一人2分ずつ、風課題の発表を行いました。
□米澤くん
変数を厚さとした提案。
乾燥帯の暑い地域、厚さを増すことで断熱性を確保している。
厚さを操作したとき、風の振る舞いはどうなるかを検証した。
厚さを増せば開口を通る風の流れが安定する場合もあれば、途中で弱まってしまうこともあった。
→講評
・建築のなかで操作するのがよいのか。都市に離散的に配置するのもいいのではないか。
・開口の出口の大きさを操作すると、だいぶ風の流れが変わるのではないか。
・熱と一緒に解けたらいいのでは。
・右下のシミュレーション結果がおもしろいと思った。厚みを変えるという操作は、開口が両側に取れない場合の住宅にも応用可能。
□北潟くん
建築のボリュームの中に、光、風、熱を取り込むために一番シンプルな方法として、
穴を開けてみることを考えた。
マスにドーナツ型の穴を開けてみることをスタートに、開口をくねらせてマスから抜いてみた。
風速が弱くなるかと思ったら、案外風が流れることがわかった。
次のスタディとして、チューブを組み合わせてみて、立体的な迷路のような形状を考えてみた。壁一枚隔てた空間で全く風の吹き方が変わったりした。
→講評
・ここから法則が導けたか。
L字が次にどうやって折れ曲がると、どういった振る舞いとなるのか、ということを
もっと詳細に見た方がよいのではないか。
いきなり形をたくさんつくってしまうのはもったいないのでは。
□大國さん
中庭型の住戸を考え、中庭で風を弱める提案。
屋根形状を変えることで、中庭に吹く風がどう変わるかスタディした。
20形状でスタディした結果、一番空気が流れる形は6番目のパターン。
→講評
・風が出るところに関しても提案があると、風の振る舞いが変わるのではないか。
・今は中庭に吹く風を快適にしようとしているが、今できている風圧差を読み解いて、室内にどうやって風を導くかが次のステップ。
・このなかでは6番目のものがいいということだが、次はフラットなボリュームからこの形にだんだん立ち上げてみて、どこでやめるのがいいのか、その差異を微細に見るのもよいのではないか。
□富山くん
テーマは風の速さを調整して、速すぎる風は減速させること。
スポンジ状のボリュームは樹木モデルを使用。
箱の集合のモデルに関しては、箱の間の風速は弱まっており、背後に対しては防いでいる。
どういうパラメタが効いてくるのかに関してはボリュームの充填率の操作をしてみた。結果、箱の間のスパンが効いてきていることがわかった。
→講評
・防風林の配置やビル風に関してリサーチを進めるとよい。
・圧損パネルと違い、三次元的な分布が生まれるのがおもしろい。
□石綿さん
川沿いの涼しい風を住宅地に流すということがテーマ
川沿いに風が流れているため、川沿いの住宅で涼しい風を町に流すように考えた。
様々な屋根形状でスタディした。
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★ここまでの5人の講評
末光先生
どういう目的でこのアイディアを使うのか、漠然でも考えながら進めた方がよい。
そのへんのイメージがあるのかどうかが少々心配。
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□藤山くん
ビル風のような不快なものを室内に取り入れて利用できないか。
まずはビル風の振る舞いを把握するためにシミュレーションを行った。
ビルに開けるボイドの位置を変化させたスタディ、後ろの建物を仮想的にスラブだけにしたスタディを行った。
→講評
・まずはビル風についてさらにリサーチすること。
・どう利用したいかが明確になっている。
□ちょうくん
下に吹き下ろしたビル風を下側の建物で取り入れて利用できないか。
各階に風の受け取る率をパラメータとして、アトリウムに隣接する各階の床スラブの寸法を調整するスタディをした。
→講評
・下に吹き下ろす風を利用するのは、駐車上などでは実現されている。実現されている案を越えないといけない。
□小松くん
風体験 タイの電車で、顔を外に出したら気持ちよかったという経験
変化量が気持ちよさを呼び起こしている。
シークエンシャルな風の体験をつくれないか。
高さのある空間、へんぺいな空間、ビルの屋上のような発散する空間
それぞれの空間の組み合わせで、つなぎ目に風環境の変化をつけられないか。
→講評
・原体験から建築を考えているのが良いと思う。
・小松君は時間的な視点を含んでいる。非定常計算をするべきである。
・定常計算で3つの風向を計算するのと、前の風向の影響が残っている中で別の風向の風が吹いたときでは反応が違うはず。
□小林さん
カーテンの動きがおもしろいとおもった。
魅力的なのは、風が一旦入って、出て行く時に風速が上がり空気のかたまりのようになること。
→講評
・小林さんの提案は、風の質を丁寧に考えている。
・小林さんの案、現象としてはおもしろいが、工学的にどうやって評価するのか。これだからよい、ということを他人にも説明できないと行けない。
そこをどうやって客観的に証明していくのかが問題。
・原体験から建築を考えているのが良いと思う。
・小林さんは時間的な視点を含んでいる。非定常計算をするべきである。
・定常計算で3つの風向を計算するのと、前の風向の影響が残っている中で別の風向の風が吹いたときでは反応が違うはず。
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★ここまでの講評
末光先生
皆それぞれかたちの特徴が出てきている。
できあがってきた空間の空間的特性を、どういう空間に利用出来そうか、
意識することが大切。
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□B4テーマ発表
つづいて、B4がテーマ発表を行いました。
□一杉くん
エネルギーを集めることで何かに使えないか。
水道の水に着目した。
水の流れを外に開くことで快適な都市空間をつくる。
→講評
・位置エネルギー的な側面を考えているのか、単純に水として見ているのか
・水は熱容量の大きな物質、水に変わる物質もあるかもいしれない。
□能上さん
緑化をテーマに体積は変えずに、表面積が増えることで緑化の効果を大きくできないか。
アイスランドの例から勾配屋根でも緑化ができる。
交通の多い、環境の悪いところでも緑化が可能。
舗装率が1930年から1990年で大幅に上昇している。
緑化の提案で都市問題にも貢献できる。
→講評
・緑化はポリティカルコレクトネス的な側面が。
今までの人がやっていないような提案があるとよい。
オリジナリティが出せればよい。
・緑化という言葉を、「土」という言葉に置き換えて考えてみればいいのではないか。
・身近に感じられる、都市的な規模の気象現象という話だったが。前回の話から多少脱線してしまったのでは。
□孟さん
前回熱帯を調べて面白いと思ったことから、
敷地をフィリピンにした。
台風がくることが大きな特徴
住民+観光客のための複合施設の提案。
→講評
・住宅なのか、大きな施設なのか
・一つの大きな建物なのか、分散的に配置するか
□矢吹くん
都市のバナキュラーに注目した
バナキュラーの概念を整理した方が良いと思ってリサーチした → 固有性+一般性
インダストリアルバナキュラー → 制度・体勢
建築家なしの建築 →土地
今普及しているマンションを原型としてヴァナキュラー建築から建具を抽出し様々な気候に対して最適な組み合わせを適用する。
東京・長野・福岡の3都市を敷地として選ぶ。
→講評
・抽出するものをコントロールすることが大切。パラメータをしぼったほうがよい。容積、戸数などをまずは設定する。経済原理主義が主流なのも一方では現実であり、リアリティは大切。
・バナキュラー建築からどうやって抽出するつもりか。
裏にひそんでいる一般性を発見していくということが大切。
地域の事例から一般性を見いだすという方向性。
・原型(マンション)にどういった問題があるのかも明らかにしなくてはいけない。
・集合住宅は戸建てより熱的に有利となる。
庇の効果より実は集合している効果の方が大きいかもしれない。
□山本くん
盆地に着目した。夏は熱がたまり暑く、冬は寒い。
岐阜県多治見市が歴代最高気温を観測している。
気象データを見てみて、多治見市と東京であまり変わりがないように感じる。
風が体感温度の大きなファクターとなっているのではないか。
岐阜県は木材の山地であり、地産地消を考えたい。
形状に関しては、縦方向の分布密度の違いについて考えたい。
→講評
・住宅スケールではなく、もっと大きいものを考えているのか。
・気候データを詳細に読み解けるとよい。
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★全体の講評
前先生
それぞれ個性があり、段階に応じたアドバイスがある。
それに応じてぴんと来るアドバイスを取り入れて進めていって欲しい。
GW中には掘るテーマをフィックスできるとよい。
B4の人はM1の人の進め方を参考にするとよい。
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本日も非常に盛りだくさんの内容でしたね!
講評を受けて、さらに案を練ってみてください。
次回の皆さんの発表を楽しみにしています!
4/23 エスキス+外部TAプレゼン
今日のスタジオの内容は
1.B4,M1に分かれてのエスキス(M1担当:前研TA B4担当:外部TA)
2.外部TAである富永、西倉のプレゼン
でした。
1.M1のエスキス(B4は記録をとっていないため省略します)
M1は前回行った、風に関するブレインストーミングをうけて
①実現したい風環境のイメージ
②その風環境が実現されるコンテクスト
③実現するための初源的な「かた」の提案とflowdesignerでのパラメータを絞ったスタディ
をまとめてくるというものでした。
以下、発表順にまとめていきます。
米澤くん
前回のリサーチで熱環境における「厚み」の意味に着目したので、今回は風環境における「厚み」の意味について考えてみた。
厚みの異なるボリュームを積層させることで隙間を通り抜ける風環境が違うことがおもしろいと考えた。
<アドバイス>
ビル風、高層建築における通風の問題は、高さごとの風速の違いや、周囲にある建物によって引き起こされている。
1.高さごとの風速の違いを均質にする
2.ビル風の原因となる正圧と負圧の対比を作らない
といった目標を設定してあげる事で、より深いスタディにつながる。
杉崎さん
①風環境のイメージ、②場のイメージから入った。
①風をまきあげる
風をそわせる
風に強弱をつける
②高温多湿
低湿地
衛生面☓
年に数回突風が吹く
これらのイメージを実現する建築の「かた」として、「曲面」を持った壁と「ひだ」によって構成されるボリュームを考えた。
<アドバイス>
「曲面」を持った壁について
建築に風がぶつかるときに、風が舞い上がるのは「剥離」によるものであり、「曲面」で構成されているからといって「剥離」が大きくなるかは微妙。「曲面」にあたったら「風が舞い上がりそう」というイメージから出発して、原理的に追求するところまでいってほしい。
「ひだ」で構成されるボリューム群について
「ひだ」と一言にいっても、構成しているパラメータが多い。もう少し分解してスタディをすることで、まずは「かた」と風環境の関係性を掴んでほしい。そのあとに全体として「ひだ」のような建築群を構成するというプロセスが望ましい。
小松くん
風の体験はシークエンスだと考える。空間の境界を風の質の変化で捉えさせる建築。
風環境と対応する「かた」を持った建築空間を組み合わせる。
<アドバイス>
・スタジオ全体としてはその方向性でよいが、課題としてはひとつの「かた」を設定して、その「かた」でスタディをしてほしい。
・風環境が「どのように」違うのかにどこまでリアリティ、具体性をもたせられるかが大事。シミュレーションだけではなく、実体験を実測し、それを建築の「かた」におとしこむという操作も今後必要になってくる。また、その違いを見る人にどう共感してもらうのか、プレゼンテーションも見据える必要がある。CFD画像、グラフだけではないプレゼンテーションにも期待。
Arisさん
故郷ギリシャの伝統的建築によく見られる地中に埋まった建築に注目。換気がネックとなるので、flowdesignerで通風環境をスタディ。
深さHと中庭の流れ方向長さDの比H/Dを3段階にふってスタディ。
その中から風環境がもっとも悪かったH/D=0.3のケースでディテールをスタディした。
H/D=0.15,0.6では中庭で循環が起こっていたのに対して、H=0.3では循環が起こらないといった発見も見られました。
<アドバイス>
フォーマットを整えれば木曜の発表はokです。
もうちょっと先の話をすると、このスタディから得られた知見を自らの設計にどう活かすかという考えも巡らせておくといいと思います。
石綿さん
都市スケールの風の流れを見ると、川沿いが通風環境がいいことがわかる。同時にその風は周りの建物によってせき止められていることもわかる(写真左図参照)
川沿いの心地よい風を都市により広められる建築群を考えたい。
まずは一つの建築で周りに風を受け流す屋根形状をスタディした。
<アドバイス>
群で設計するのであれば、風を受け流す屋根、受け入れる屋根といった性格付けを与えてあげることで建築の設計に幅がでる。屋根形状のスタディは過去の前スタジオでも数多くされているので、データベースとしてうまく活用しながら設計を進めると、密度のある設計ができる。
大國さん
①風環境のイメージ ②場のイメージから入った。
①風をボリュームにあてて後ろの中庭の風を弱める
②一定方向に強い風が吹く場所
風上方向にボリューム、後ろ側に中庭がある構成でボリュームの形をスタディした。
<アドバイス>
目的ははっきりしているので、その目的を達成するためにありうる「かた」の数をもっと増やすスタディをすべき。その結果をもとに「かた」のパラメータをふっていく。
小休止をはさんで・・・
富山くん
四角いブロックを集積させることで、風を減衰させる「かた」を考えた。
<アドバイス>
いきなり「ランダム」という言葉でスタディをしてしまうと「パラメータ」と「風環境」の関係性をつかみにくくなってしまう。a.パラメータの設定、b.評価指標にもっと工夫が必要。例えば、
a.ある領域を固定して、その中に配置するボリュームの大きさ、充填率を変数とする。
b.風速を評価指標としてしまうと「ムラのある」風速という曖昧な表現に収束してしまう。領域内の「圧力損失」、ベクトル通過アニメを利用してある風量が通りすぎるのにかかる「時間」などを指標としては。
北潟くん
イメージはOMA設計のプラダL.A。開口は開いていても、内部空間を入り組ませることで、風が減衰し、吹かない場所も生まれるのではないか?
小林さん
①カーテンから滲み出してくる風のような時間によって変化のある風をイメージした。②場所は様々な場所から風が吹いてくる田園地帯
<アドバイス>
ゆらぎのような時間軸を含んだ風の流れはスタジオで教えている定常計算では解けない。
進め方として2つの方向性
a.実現したい風環境をシミュレーションで表現しうる範囲に抽象化する。カーテンから滲み出してくる風という時間軸での風環境の変化を場所ごとの風環境の違いに読み替え、設計を進める。
b.シミュレーションだけでなく、実測も含めて設計を進める。
藤山くん
都市に吹く風を建物内部にうまく取り込めるビルの「かた」を考えた。
スラブの形をパラメータとしてスタディを行った。
<アドバイス>
風を考えるのであれば、入口と出口を風を考えたあとに内部を考えるのが定石。まずはそこから始めてみてはどうか?
高さによって風速が違うべき乗則にのっとれば、高さによって形態に変化が出てくる。
ちょーしん
ビルの吹き下ろしの風を室内に取り込むことで風環境を実現する。
続いて、富永さん、西倉くんのプレゼン。
富永さん
自身の建築に対する考え方を主に卒業設計の紹介を通して発表していただきました。
以下、概要です。
敷地というものを考えた時、そこには人々の生活、文化、地形などとても多くのコンテクストが含まれている。
しかし、高層ビルの開発に代表されるように最近は都市はすぐ変わってしまうように見える。
都市の経験を読み解き、次の時代に受け継ぐ設計はどのようにあるのかを考えてきた。
結婚式でバイトをしているとき、毎回同じような式が繰り返されていることに虚しさを感じた。お台場という場所に見つけた159年もの間、放置されてきた敷地。圧倒的な時間の蓄積は場所に差異を生み出し、潮の満引きと組み合わさることでさらに多様な場所性を獲得していた。そんな敷地に結婚式の式場とその周囲を囲む公園を設計した。潮位差によって海と式場との関係性が変わり、公園との関係性も変わる。日々再生産される式ではなく、一生に一度だけ出会うことのできる特別な日を迎えてもらうための式場を設計した。
西倉くん
敷地から発想を深めるのではなく、原理、モデルから思考を膨らませていった例として、卒業設計、M1の設計課題についてプレゼン。
世界中に同じ物を作ると何が起こるのかを発想の原点とした。
グローバル化する世界において世界中に進出する世界企業の建築をユニクロをケーススタディとして設計した。
スラブが積層した「かた」をS,M,L,XLで相似変形させ、敷地、規模に応じてその「かた」を敷地におとしこんでいった。
M1の設計
前スタジオを履修した。
空間の密度で建築を規定することを考えた。
知見として得られたのは、科学的なアプローチは気密をよくするとか、断熱をちゃんとやるといったポリティカルコレクトネスじゃなく、もっと創造的な結論に持っていくこともできるということ。
敷地を丁寧に読み解き、プログラム、空間を当てはめていった富永さん、建築の形式から発想を深め、敷地に落としこんでいった西倉くん。対極的なアプローチを持つ二人にお話はこれからどんどん設計を進めていく皆さんにとっていい道標となると思います。
これだけ優秀な外部TAを揃えるスタジオはなかなかありません。皆さん積極的に意見をもらって、自分の設計案をよりよいものにしていってください。
気候リサーチ発表+風課題ブレインストーミング+前先生小レクチャ
4/18(木)のスタジオの内容です。
・気候リサーチ発表
・風課題ブレインストーミング
・前先生小レクチャ
の3本立てでした。
まずは3班・乾燥帯のリサーチです。(一杉君・杉崎さん・米澤君)
○ヴァナキュラー建築
・採風塔と中庭を持つ住居(カイロ)
乾燥地帯に建つ南面に採風塔を持つ住居。
湿度が低く気温が高いため、採風塔による自然通風と中庭に設けられた池による気化冷却が有効。
夏は日陰となる南側が、冬は日向になる北側が主な居住空間となる。
また南側の採風塔が中庭に日陰を落としており、北側のヴォリュームに日陰を落とさず、かつ十分な通風効果を得られるような高さのバランスが重要である。
地下に潜って暮らす住居。
一日の中で寒暖の差が激しく、熱容量を大きくすることが快適性向上に有効。
地下に潜ることで、土の恒温性を利用し、快適に暮らすことができる。
・ケヅメリクガメ/プレーリードッグ/ミーアキャット(サハラ砂漠)
いずれも地中に穴を掘って生活する生き物。
砂漠は地上は昼間40℃を超えるため、年中15℃程度に保たれる地中で暮らすことで厚さを凌ぐ。
地面に掘られた巣の入り口は、盛り土がされており少し高くなっている。これは地表面付近を吹く風よりも、少し高い位置で風をキャッチすることでより換気量を増やすためではないか。
この形態は密集街区で風を取り込むための建築形態に結び付くかもしれない。
・砂丘
砂漠の風によって作られる地形。
砂丘の規模と形態は風向き・風速・粒子の大きさ・量・周辺地形等から決定され、三日月上のバルハン砂丘、横列砂丘、縦列砂丘などに分類される。
砂丘を形作る風の流れはこの地域に特有の砂除けのテントにも見られ、風が吹くことで生まれる負圧部分にテントが吸い寄せられ、風除け・砂除けの空間が生まれる。
・シャカイハタオリドリ
高い樹の少ない乾燥帯において、一つの樹に複数の鳥が集中して巣を作る。
乾燥した枝を重ねて作る巣は長期的に使用可能で、段々と巣は肥大化していく。肥大化した巣は高い遮熱性と断熱性を有する。
また、巣の下側に入り口が設けられ、日射を防ぐとともに、夜間は内部にたまった熱気を逃がさない工夫がされている。
・サボテン
植物が乾燥帯を生き抜くためには、強すぎる日射を防ぎ、蒸散を防ぐ必要がある。
サボテンは球に近い形をしており、同じ体積では表面積が小さい。
また、表面に襞を設けることで、表面積は増えてしまうが、自身に影を落とす効果がある。襞による表面積と影のバランスが重要。
○コメント
前先生:気候データを見ると、カイロも意外と湿度が高いがこれはなぜか?
湿度が高いと通風が、湿度が低いと蒸散が重要になってくるので、採風塔を持つ住居は理にかなっている。
季節変化だけでなく、一日の中の時間変化をもう少し分析できるとなお良い。
続いて5班・熱帯夏季少雨気候・サバナ気候のリサーチです。(能上さん・小林さん・藤山君)
○ヴァナキュラー建築
中南米・インド・アフリカの比較を行った。
いずれの地域でも板張りや茅葺の住居が多く、通風・換気を意識したつくりとなっている。
四角いプランが多い中、アフリカのみ丸い円形のプランが見られ、単純な一屋根に一世帯の住宅形式のみでなく、集合住宅のようなものや分棟の住宅なども見られた。
いずれの地方でも雨季と乾季が存在し、茅葺は雨季の前に茅きなおす。
○バイオミミクリー(植物)
乾燥から身を守るために、様々な部位が気候に適応している。
・葉・茎における適応化
サボテン・ユーフォルビアなどは、表面積の小さい球体で、また葉ではなく針とすることで蒸散を抑えている。
・幹における適応化
バオバブの幹内部はスポンジ構造となっていて、大量の水分を貯めることができる。
・葉・根による特殊化
アケビモドキは袋状で中空の葉と、その中に伸びる根を持つ。
袋状の葉で湿度を維持し、溜まった結露を根が再吸収する。
○バイオミミクリー(動物)
・キリアツメゴミムシダマシ(ナミブ砂漠)
乾燥する乾季の朝に朝露から水を得るのに適した形。
背中の部分が親水性のある凸部と疎水性のある凹部からなり、凹部にたまった朝露を凸部で回収することができる。
・サケイ類(ユーラシアとアフリカの砂漠)
飛べないひな鳥に水をやるために、親鳥がスポンジのような腹部の羽毛に水を吸収させて運ぶ。
○コメント
前先生:結露が起こるのは、砂漠の一日の寒暖差が大きく、夜間・明け方は気温が下がるから。また空気が乾燥していると、夜間放射冷却が大きくなり、日較差が大きくなる。
続いて2班・温帯のリサーチです。(矢吹君・石綿さん・大國さん)
○ヴァナキュラー建築
・多摩丘陵の民家(東京:Cfa:温暖湿潤気候)
高温多湿の日本の夏対策として、高床・土間・換気のしやすい大開口・分厚い茅葺屋根と深い軒などが特徴として挙げられる。夏を旨としたつくり。
・校倉造の民家(チェコ:Cfb:西岸海洋性気候)
直径30~40㎝の丸太を積むことで、分厚い外皮を形成。丸太と丸太の間には土や漆喰を塗り、気密性を高めた。冬を旨としたつくり。
・ヤオトン(中国:Cw:温暖冬季少雨気候)
黄土高原の土が柔らかく、また黄砂を避けるようにして作られた。年較差が大きく、安定した快適性を得るために地中に作られている。粉塵の侵入を防ぎ、低温乾燥した地域に適した、冬を旨としたつくり。
・白い家(アテネ:Cs:地中海性気候)
地中海性気候では、降水量が少なく、夏は特に乾燥してかつ日射が強い。
白い壁にすることで赤外線を反射し、窓も小さくすることで日射取得を減らす。夏を旨としたつくり。
・オリーブの葉(Cs気候)
乾燥に強いように小さく硬い葉で、表面積を減らしている。
・オビカレハの巣
糸によって作られた多層構造のテントで、温室のような効果があり室温を30~35℃に保つ。高温の巣の上層部から、巣からぶら下がって風に当たることで、体温調整を行うことができる。
○コメント
前先生:気候だけでなく、文化のルーツも分析できるとなお良い。多摩丘陵の住居は南方からの流れを汲んでおり、それゆえ夏旨となっている。
海流の影響で気候は大きく左右される。
小原:低温多湿の気候は想像しづらい。暖房を焚くとすぐに結露してしまいそう。
続いて1班・亜寒帯のリサーチです。(山本君・北潟君・小松君)
気候と恒温動物の形態の関係を示したベルクマン=アレンの法則を元にして、植物や建築にこの法則をあてはめるための仮説を立てた。
拡張版アレンの法則として、「寒帯における形態は表面積を少なく、温帯における形態は表面積を大きくする傾向にある。」、拡張版ベルクマンの法則として、「寒帯における形態は内部の熱を外部と遠ざけるように内側へ、温帯における形態は内部の熱を外部と近づくように外側に配置する傾向にある。」という二つの仮説の元、亜寒帯の動物・植物・建築をリサーチした。
○ヴァナキュラー建築
・イグルー(カナダ)中村家住宅(沖縄)の比較
イグルーは内部の段差だけでなく、半球体という形態が表面積を少なくする効果を生んでいる。温帯の中村家住宅では屋根は寄棟で表面積が大きい。
・芝の家(アイスランド)
アイスランド北部は牧草地帯で木があまりないために、石積みの上に草を生やして断熱効果を高めている。ボリュームが地下に潜っていることも、表面積を減らす工夫の一つ。
・アイヌのチセ
木組みに屋根を茅葺で作っている。湿潤地域であるため、通風のいい構造になっている。気密性は薄いが、冬になり屋根に雪が積もると厚く積もった雪が断熱効果を果たす。
○バイオミミクリー(動物)
ベルクマンの法則の例として、
ホッキョクグマ/マレーグマ
エゾシカ/ケラマジカ
アレンの法則の例として、
ホッキョクギツネ/フェレック
ホッキョクウサギ/アンテロープジャックウサギ
を挙げた。
○バイオミミクリー(植物)
亜寒帯の植物にとって、日射が少ないことと、凍結することが最大の問題。
ツンドラ気候は永久凍土が点在しているため、温帯のように深く根をはることができない。そのため根は柔らかくバネのように伸縮する。
また、針葉樹と広葉樹を比較しても、針葉樹のほうが表面積が小さく蒸散が起こりにくい。
氷雪藻もしくは雪上藻と呼ばれる藻類は、寒さや夏の日射から葉緑体を守るために赤色の外皮を持つ。
○コメント
前先生: 寒冷地のほうが形態が大きくなるとのことだが、密度は?大きさと密度をセットで論じる必要がある。
空間の大きさには素材の制約の面が大きい。
大沼:一つの法則に結び付けようとした姿勢が良かった。
アイスランドのように、同じ国の中でも気候帯が違う場所をピックアップし、同じ国内・文化圏の中で純粋に気候の違いを比較できたらより明確になったのでは。
最後に4班・熱帯雨林気候・熱帯モンスーン気候のリサーチです。(孟さん・趙君・富山君)
○気候
・クアラルンプール(Af:熱帯雨林気候)
赤道直下を中心に幅広く分布。一年を通して東京とほぼ同じ日射量。東京の8月の気温が一年中続き、年較差はほとんどない。年降水量は240㎜ほど。
・バンコク(Am:熱帯モンスーン気候)
冬から春にかけて乾季。気温は東京の夏程度で、年較差はほぼなく、日較差は東京と同程度。雨季は東西方向の風が強く、乾季は南北方向の風が強い。
○ヴァナキュラー建築
・バハイナバト(フィリピン)
木骨石造の家。湿潤気候によく見られる高床式ではなく、石造の1階と木造の2階からなる。半屋外空間が多くあり、家の中まで風が行き届く。
・台風島の家(フィリピン)
台風の被害が多い地域に建てられた石造の家。壁はモルタルや石灰で塗り固められ、厚さは60㎝にもなる。厚い壁は高い断熱性と蓄熱性を持ち、室温を安定させる。
また雨季の卓越風向には開口が設けられているが、乾季の卓越風向は閉じられている。
・Mycocepurus smithii(中南米の雨林に生息する菌類を栽培するアリ)
集団規模によって2種類の巣を作り分ける。
大集団は垂直方向にまっすぐに掘られたトンネルから、Fungus-gardenと呼ばれる菌類の栽培室がいくつも枝分かれした構造となっている。豪雨の時もFungus-gardenが水浸しにならないための工夫。
小集団は一本道の通路の途中にいくつものFungus-gardenが設けられるネックレス型をとる。
・熱帯植物の葉に見られる4つの工夫
1)ベゴニア:青虹色の葉が特定の波長域の可視光線を反射することで、光阻害を抑制し、効率良い光合成を行う。
2)ベゴニア:葉の表層が透明で凹凸になっている。以前は間接光を効率よく収集するためのレンズと考えられえていたが、実際には表面に保水性を持たせる効果が大きいとされている。
3)ギョリュウバイ属:熱帯雨林の下層部に生息。下層に届くわずかな光を有効利用するため、葉の裏側にある色素が、透過しようとする日射を反射して光合成を行う。
4)イチジク:熱帯雨林の下層の暗く湿潤な空間で、葉の表層を乾かすため、じょうごのような形をしている。
○コメント
西倉:この段階ではこれでいいかもしれないが、拡張する話が拡張。
モデルすべてを肯定するだけでなく、そこから自分なりの仮説、抽象モデルを構築する努力が必要。
前先生:「Global Vision」という、いろいろな地域の生活を同時進行で追うドキュメンタリー番組がある。
http://www.globalvision-tv.com/index2.html
以上で5班分のリサーチ発表が終わりました。
みなさん本当にお疲れ様でした!
短い時間の中で本当に丁寧にリサーチされていたと思います。
ただ、全体的に気候の読み解きが淡泊だった印象があります。
ヴァナキュラー建築も、動物も、植物も、そこで暮らす人々の生活も、全てその気候に何かしら適応しているはずです。建築・動物・植物といった違った要素を統一的に見るために、その根底にある気候をキーワードに分類をしたのです。単純なデータの羅列になるのではなく、その裏に隠れた共通点を見つけられると、なお良かったと思います。
続いて3つのグループに分かれて「風」をキーワードにブレインストーミングを行いました。M1の人たちは、次の木曜までに風のシミュレーションを用いた課題を出題しました。その課題を元に各班活発に意見を交わし、①風環境のテーマ②場のイメージ③空間の型について議論しました。
各班で議論した内容を忘れず、木曜に向けて解析を始めましょう。
最後に、前先生から風の小レクチャがありました。
シミュレーションの限界と、その限界の中で、どれだけ重要なパラメータを抽出してモデル化するか、また得られたデータから何を想像するかが重要です。
FlowDesignerでは風の時間平均を解いているため、細かい渦や揺らぎのようなものは再現することができない。
スーパーマリオは8bitでもあれだけ面白いことができた。シミュレーションでもソフトの制約の中で必ずモデル化・抽象化することで解析することはできるので、この一週間ではそこを徹底的に考えてほしい。
以上です。受講生のみなさん、非常に長い時間お疲れ様でした。
これからシミュレーションも本格化してくると思いますが、TAも全力でサポートしますので、一緒にがんばっていきましょう!