前スタジオ2013始動!

今年もスタジオ課題が始まりました!

今年度から、スタジオ課題の体制が大きく変わり、学部と修士で別々のスタジオを設けることとなりました。

学部のスタジオは"B4スタジオ"のカテゴリーで、修士のスタジオは"M1スタジオ"のカテゴリーで分類します。

 

今年度のB4前スタジオの課題は、「これからの都市におけるヴァナキュラー建築」です。

f:id:MaeStudio2013:20130409164312p:plain

 ■趣旨

 ヴァナキュラーという概念は、バーナード・ルドフスキーによる1964年のMoMAにおける展覧会とそのカタログ『建築家なしの建築』によって広く知らしめられた。それは、「現地調達」の材料で「非職業的」生産による「風土性」をもつ「非商品的」建築にフォーカスし、近代建築へのカウンタープロポーザル、工業化社会に対する危惧として提出され、実際、経済原理の波が押し寄せた現代の街並みは大量生産品に埋め尽くされ、画一的なものになってしまった。それとほぼ同時に、工業化製品の最たる例である空調設備の登場・普及によって、温度湿度は自由に制御できるようになり、建築自体に「環境制御装置」として側面が急速に失われていったのである。しかし、インフラストラクチャーが永久に維持され、無限にエネルギーが供給されるという幻想が崩れ去りつつある現在において、果たしてそのような建築は次の世代に住み継がれていくのだろうか。

 

 本スタジオでは、ヴァナキュラーの「風土性」という側面を工学的なアプローチから鑑み、まず、気候や地形といった人の活動を長きにわたって規定してきたものに向き合い、これからの都市のおける建築を考える。確かに異なる風土を定量的に見直してみることは、画一化した建築に差異を与えるきっかけとなるだろう。敷地は熱帯雨林気候から氷雪気候まで、様々な気候帯を扱い、日本国内に限らず世界中とする。気候と建築の関係を読み解く手がかりとして、非空調域としてのヴァナキュラー建築を環境工学的に検証してみることは効果的なアプローチとなるだろう。

 一方、ヴァナキュラー建築の「現地調達」という側面は、社会の前提によって、その意味が特に変容する。工業化製品がもはや日常的なものとなった現代において、ごく普通の産業施設という意味でインダストリアル・ヴァナキュラーという言葉も可能かもしれない。ゲーリー自邸はその先駆け的事例だと言えるだろう。限界集落のような場所では、エネルギーの「現地調達」も考えることになるだろう。

 ヴァナキュラーという概念は、気候や地形という変わらないものと、ライフスタイルや科学技術などの日々変わるものを内包し、人口減少時代のストックの生かし方から新興国の人口過密地域の建築のあり方まで、扱う地域によって全く異なる提案が生まれるだろう。

 パラダイムが大きく変わろうとしている現代において、設計ツールとしてシミュレーションを用い、不変な物理現象を扱い、風や熱、光のふるまいを可視化しながらスタディを行うことは、不安定な時代においても住み継がれる建築をつくりだす可能性を高めてくれるはずである。ヴァナキュラー建築を参照しながらも、単なるノスタルジーに陥らない現代の技術・状況に向き合い、建築が持ちうる社会的役割をも広げる提案を期待する。

※参考文献 建築家なしの建築/B・ルドフスキー『驚異の工匠たち──知られざる建築の博物誌』(渡辺武信 訳、鹿島出版会、1981)/三宅理一「インダストリアル・ヴァナキュラー」(『新建築』1983年5月号、所収)

 ■課題

1:住宅など、ライフスタイルを想定することのできるものを設計すること。

2:気象分析ツールEcotectを用いて、気象データを分析し、その土地の与条件をしっかり把握したうえで、設計に臨む。

3:温湿度・風・光環境測定器を用い、自身の環境要素に対する感覚を数値として把握する。

4:風と熱の環境シミュレーションソフトFlowDesignerを主に用い、建築形態が持つ環境性能を把握するスタディを行いながら、シミュレーション技術を習得する。必要に応じて、風洞実験やモックアップを作っての検証も行うことができる。

■履修条件・初回集合場所 学部生対象 定員制限なし 4/11(木) 18時(12号教室) 以降、毎週火曜13時~、木曜18時~にエスキス(状況により変更もある)