4/23 エスキス+外部TAプレゼン
今日のスタジオの内容は
1.B4,M1に分かれてのエスキス(M1担当:前研TA B4担当:外部TA)
2.外部TAである富永、西倉のプレゼン
でした。
1.M1のエスキス(B4は記録をとっていないため省略します)
M1は前回行った、風に関するブレインストーミングをうけて
①実現したい風環境のイメージ
②その風環境が実現されるコンテクスト
③実現するための初源的な「かた」の提案とflowdesignerでのパラメータを絞ったスタディ
をまとめてくるというものでした。
以下、発表順にまとめていきます。
米澤くん
前回のリサーチで熱環境における「厚み」の意味に着目したので、今回は風環境における「厚み」の意味について考えてみた。
厚みの異なるボリュームを積層させることで隙間を通り抜ける風環境が違うことがおもしろいと考えた。
<アドバイス>
ビル風、高層建築における通風の問題は、高さごとの風速の違いや、周囲にある建物によって引き起こされている。
1.高さごとの風速の違いを均質にする
2.ビル風の原因となる正圧と負圧の対比を作らない
といった目標を設定してあげる事で、より深いスタディにつながる。
杉崎さん
①風環境のイメージ、②場のイメージから入った。
①風をまきあげる
風をそわせる
風に強弱をつける
②高温多湿
低湿地
衛生面☓
年に数回突風が吹く
これらのイメージを実現する建築の「かた」として、「曲面」を持った壁と「ひだ」によって構成されるボリュームを考えた。
<アドバイス>
「曲面」を持った壁について
建築に風がぶつかるときに、風が舞い上がるのは「剥離」によるものであり、「曲面」で構成されているからといって「剥離」が大きくなるかは微妙。「曲面」にあたったら「風が舞い上がりそう」というイメージから出発して、原理的に追求するところまでいってほしい。
「ひだ」で構成されるボリューム群について
「ひだ」と一言にいっても、構成しているパラメータが多い。もう少し分解してスタディをすることで、まずは「かた」と風環境の関係性を掴んでほしい。そのあとに全体として「ひだ」のような建築群を構成するというプロセスが望ましい。
小松くん
風の体験はシークエンスだと考える。空間の境界を風の質の変化で捉えさせる建築。
風環境と対応する「かた」を持った建築空間を組み合わせる。
<アドバイス>
・スタジオ全体としてはその方向性でよいが、課題としてはひとつの「かた」を設定して、その「かた」でスタディをしてほしい。
・風環境が「どのように」違うのかにどこまでリアリティ、具体性をもたせられるかが大事。シミュレーションだけではなく、実体験を実測し、それを建築の「かた」におとしこむという操作も今後必要になってくる。また、その違いを見る人にどう共感してもらうのか、プレゼンテーションも見据える必要がある。CFD画像、グラフだけではないプレゼンテーションにも期待。
Arisさん
故郷ギリシャの伝統的建築によく見られる地中に埋まった建築に注目。換気がネックとなるので、flowdesignerで通風環境をスタディ。
深さHと中庭の流れ方向長さDの比H/Dを3段階にふってスタディ。
その中から風環境がもっとも悪かったH/D=0.3のケースでディテールをスタディした。
H/D=0.15,0.6では中庭で循環が起こっていたのに対して、H=0.3では循環が起こらないといった発見も見られました。
<アドバイス>
フォーマットを整えれば木曜の発表はokです。
もうちょっと先の話をすると、このスタディから得られた知見を自らの設計にどう活かすかという考えも巡らせておくといいと思います。
石綿さん
都市スケールの風の流れを見ると、川沿いが通風環境がいいことがわかる。同時にその風は周りの建物によってせき止められていることもわかる(写真左図参照)
川沿いの心地よい風を都市により広められる建築群を考えたい。
まずは一つの建築で周りに風を受け流す屋根形状をスタディした。
<アドバイス>
群で設計するのであれば、風を受け流す屋根、受け入れる屋根といった性格付けを与えてあげることで建築の設計に幅がでる。屋根形状のスタディは過去の前スタジオでも数多くされているので、データベースとしてうまく活用しながら設計を進めると、密度のある設計ができる。
大國さん
①風環境のイメージ ②場のイメージから入った。
①風をボリュームにあてて後ろの中庭の風を弱める
②一定方向に強い風が吹く場所
風上方向にボリューム、後ろ側に中庭がある構成でボリュームの形をスタディした。
<アドバイス>
目的ははっきりしているので、その目的を達成するためにありうる「かた」の数をもっと増やすスタディをすべき。その結果をもとに「かた」のパラメータをふっていく。
小休止をはさんで・・・
富山くん
四角いブロックを集積させることで、風を減衰させる「かた」を考えた。
<アドバイス>
いきなり「ランダム」という言葉でスタディをしてしまうと「パラメータ」と「風環境」の関係性をつかみにくくなってしまう。a.パラメータの設定、b.評価指標にもっと工夫が必要。例えば、
a.ある領域を固定して、その中に配置するボリュームの大きさ、充填率を変数とする。
b.風速を評価指標としてしまうと「ムラのある」風速という曖昧な表現に収束してしまう。領域内の「圧力損失」、ベクトル通過アニメを利用してある風量が通りすぎるのにかかる「時間」などを指標としては。
北潟くん
イメージはOMA設計のプラダL.A。開口は開いていても、内部空間を入り組ませることで、風が減衰し、吹かない場所も生まれるのではないか?
小林さん
①カーテンから滲み出してくる風のような時間によって変化のある風をイメージした。②場所は様々な場所から風が吹いてくる田園地帯
<アドバイス>
ゆらぎのような時間軸を含んだ風の流れはスタジオで教えている定常計算では解けない。
進め方として2つの方向性
a.実現したい風環境をシミュレーションで表現しうる範囲に抽象化する。カーテンから滲み出してくる風という時間軸での風環境の変化を場所ごとの風環境の違いに読み替え、設計を進める。
b.シミュレーションだけでなく、実測も含めて設計を進める。
藤山くん
都市に吹く風を建物内部にうまく取り込めるビルの「かた」を考えた。
スラブの形をパラメータとしてスタディを行った。
<アドバイス>
風を考えるのであれば、入口と出口を風を考えたあとに内部を考えるのが定石。まずはそこから始めてみてはどうか?
高さによって風速が違うべき乗則にのっとれば、高さによって形態に変化が出てくる。
ちょーしん
ビルの吹き下ろしの風を室内に取り込むことで風環境を実現する。
続いて、富永さん、西倉くんのプレゼン。
富永さん
自身の建築に対する考え方を主に卒業設計の紹介を通して発表していただきました。
以下、概要です。
敷地というものを考えた時、そこには人々の生活、文化、地形などとても多くのコンテクストが含まれている。
しかし、高層ビルの開発に代表されるように最近は都市はすぐ変わってしまうように見える。
都市の経験を読み解き、次の時代に受け継ぐ設計はどのようにあるのかを考えてきた。
結婚式でバイトをしているとき、毎回同じような式が繰り返されていることに虚しさを感じた。お台場という場所に見つけた159年もの間、放置されてきた敷地。圧倒的な時間の蓄積は場所に差異を生み出し、潮の満引きと組み合わさることでさらに多様な場所性を獲得していた。そんな敷地に結婚式の式場とその周囲を囲む公園を設計した。潮位差によって海と式場との関係性が変わり、公園との関係性も変わる。日々再生産される式ではなく、一生に一度だけ出会うことのできる特別な日を迎えてもらうための式場を設計した。
西倉くん
敷地から発想を深めるのではなく、原理、モデルから思考を膨らませていった例として、卒業設計、M1の設計課題についてプレゼン。
世界中に同じ物を作ると何が起こるのかを発想の原点とした。
グローバル化する世界において世界中に進出する世界企業の建築をユニクロをケーススタディとして設計した。
スラブが積層した「かた」をS,M,L,XLで相似変形させ、敷地、規模に応じてその「かた」を敷地におとしこんでいった。
M1の設計
前スタジオを履修した。
空間の密度で建築を規定することを考えた。
知見として得られたのは、科学的なアプローチは気密をよくするとか、断熱をちゃんとやるといったポリティカルコレクトネスじゃなく、もっと創造的な結論に持っていくこともできるということ。
敷地を丁寧に読み解き、プログラム、空間を当てはめていった富永さん、建築の形式から発想を深め、敷地に落としこんでいった西倉くん。対極的なアプローチを持つ二人にお話はこれからどんどん設計を進めていく皆さんにとっていい道標となると思います。
これだけ優秀な外部TAを揃えるスタジオはなかなかありません。皆さん積極的に意見をもらって、自分の設計案をよりよいものにしていってください。