西沢大良様レクチャ+エスキス

6月6日(木)、本日の前スタジオは、以下の内容でした。

西沢大良様レクチャ

・エスキス

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西沢大良様レクチャ

「contemporary building-type in wood」

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環境というと、環境工学、エネルギー消費というような多くの意味がある。

いずれ収斂していくだろうが、本日は実作を通してレクチャを行う。

実作では、木を用いた建築を考えてきており、在来木造をつかって構成してきた。

 

■building type、建築型とは

20世紀では機能的な建築タイプのことを指していた。

近世では、身分や階級によってそもそも住む区画や建物が決まっていた。

階級的なbuilding typeに人々を振り分けたのが近世である。

それが近代都市において、機能的なbuilding typeに変遷してきた。

これからは、環境的なbuilding type が生まれてくるのではないか。

日本で、近代建築以降の建築型をやるとしたら木造にあると思っている。

 

■FORESTRY HALL 2002~2004

砥用(ともち)町

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植林による杉山がある場所であり、人工的に作られた丘といえる周辺環境を持つ。

林業の町において、地元の杉材を用いるという要求の上、林業総合センターを設計した。

用途は体育館。

人工的な丘でもあり、自然環境とも呼べる「丘」が周囲を取り囲んでいることが

特徴だと思った。

 

建築は、自然100%の場所に建つわけではない。

畦道もあれば、電線や電柱が立っている。

コンテクストという意味では、自然環境ということにも、人工環境ということにも答えなければいけない。

誰もできなかったような木造建築をつくれば、

後世仮に林業が廃れてしまった後でも、

林業の栄えた町があったということが否応なしに伝わるのではないかという施主の考えがあった。

また、予算的にも構造を露出させざるを得なかった。

 

この建物は、コンクリートを一切使っていない。

上部構造を木造としたことで軽い構造となり、基礎にもコンクリートを打たなかった。

通常基礎部にかかるコストを上部構造に振り分けることで完成している。

 

厳密には混構造、軽量鉄骨と木造である。

外側に鉄骨の華奢なフレーム、内側に木造の構造を用いた。

腐食菌の恐れを考えると木は外壁の中に入れたくないという思いがあり、

外周からセットバックした場所に木の構造をつくり、鉄骨と緊結して混構造とした。

 

近代建築に対して持っている異論が二つある。

施設の内容が何であれ構造形態が同じになってしまうこと。そしてそれに慣れてしまっていること。

つまり、構造がプログラムに対して何も対応していないこと。

もう一点は、周辺環境に対する追従性。

 

屋根構造に関しても、軽量鉄骨と木でトラスを組んでいる。

強いところと弱いところを作ると、それに対して天井高の高いところと低いところができるため、

それを平面計画に対応させた。

これは、プログラムに対して構造を提案したため、近代建築のありようから一歩前進したように思う。

 

■CONTSRUCTION TODAY in JAPAN 

「日本における建物のつくりかた」

在来木造は非常に層が多い構法(9層程度)だが、RCやSは層が少ない構法(3~4層)である。

RCやSはほとんどこの構成からほとんど変更できない。

それに対して木造は、合理化され切っていないところが面白いと思っている。

それぞれの層がそれぞれの機能を持っており、進化の仕方が違う構法である。

新たな要求が来ると層を一つ増やしていくという対応の仕方であり、建築の可能性として面白いと感じている。

 

■CHURCH SUN-PU 2006 ~ 2008

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設計の初日から、壁帯の層構成のスタディをしている。

これはプロテスタントの教会である。

建築史上、プロテスタントの教会はヴァナキュラーな構法で作られていることが多い。

今回は木造を選択した。

立方体状のボリュームに切り妻屋根のヴォリュームを併設したかたちである。

立方体のヴォリュームは、中に礼拝堂を含み、外装はレッドシダーの割肌とした。

20年程度経つと、シルバーグレーに変化し、特定の時間に特定の光の状態がつくりだされる。

内部は無垢材。

下の方は板張りだが、上に行くにつれ細くなり、隙間の占める割合が増していくような内壁となっている。

吸音材を入れて音響に配慮し、その隙間から光も入ってくる。

マイクなしで朗読ができ、人工照明なしで聖書が読めることが大切だと考えた。

プロテスタントは10時~12時に礼拝をするため、12時ごろに屋根上部の構造体が浮かび上がってくるようにトップライトの位置を決定した。

 

■HOUSE UTSUNOMIYA 2007~2008

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東京ガスとのプロジェクト。

自然エネルギーの良さをアピールするような建築というのが施主の要望であった。

半透明の部分と透明の部分から構成されている屋根を提案している。

光が生活のリズムを作り出すようなことを考え、たとえば光が12時にシンクにあたるような設計としている。

機械制御にのみ頼る人工的な生活だと、達成される環境は一種となってしまうのではないか。

季節の差も、地域の差も全くない住環境となってしまうのではないか。

建築は医療のようなものだと思っている。建築の中に入ると体内時計がリセットされるとか、元気になるといったことが実現できるとよい。

東京ガスの床暖を敷設しており、また井戸水を利用して夏には輻射冷房もできるようになっている。

さらに軒下には排煙窓を設けており、屋根下にたまった熱気を排気できるように工夫してある。

ルーバーは軽い素材で、風が通るたびにそよそよ揺れる。光もゆらめく。

光に関しては実際に模型に光を当てることでスタディした。

風も、簡易風洞実験を行い風の流れを確認している。 

 

■KOKUEIKAN PROJECT 2006~2010

壁体を見ると、建物のプログラムや周辺環境などがわかるようになってきた。

近代建築がやってきたような、プログラムはプランで解く、ということとは違う設計へのアプローチができる。

近代建築は、環境的なビルディングタイプとしては一種類である。

これは木造ではないが、上記のような考えを他の構造にも生かせないかという考えからつくった提案である。

ビルの中でも、木陰のような心地よさが感じられるような建物がつくれないかと考えた。

上空はルーバー、壁面上部は欄間状になっており、壁にはつた植物を絡ませる。

これは冷房負荷を減らすことになるが、単にそういったテクニカルなことから発想しているわけではない。

商業活動は、本質的に、人工環境だけでは成り立たないと考えている。

 

 

■質疑応答

 

質問:恐らく意識的に、講義中にモダニズムという言葉を使わなかったように思う。

   近代建築とか近代主義とかの定義はどういうふうに考えているか。

 

 

広義のモダニズムを良くないと考えている。

広義のモダニズムとは、建築家の作品も、たとえばゼネコンの作品も含むモダニズムのことである。

50年代のモダニズムは日進月歩であったが、60年代からのモダニズムは、化粧がかわっているだけに思える。

 

 

質問:壁体の話が興味深かったが、層を構成する素材の一つであるガラスについてどう思うか。

 

ガラスは面白い物性を持っていると思う。

それに対して、窓という単一の使い方には抵抗がある。

ガラスは未来永劫こうした使い方をされていくかには懐疑的である。

窓に使うというのは、ガラス本来の可能性からすると、部分であると考えている。

 

 

質問:光に関して選択的に取り込むことで、自然環境を作り出している。

   自然環境に対する選択性は、プロジェクトスタート時にもう考えているのか、

   場所に行って考えるのか。

 

後者である。場所に行って、周辺環境を観察し、どういった環境を取り込むのが良いか考える。

いつも気をつけていることは、固定観念の被害者とならないこと。

まずはまっさらな状態で敷地に行き、発想するようにしている。

 

 

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エスキス

本日のエスキスは、西沢大良様もご参加くださり、非常に熱気のある、密度の濃いエスキスの時間でした。

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小松くん

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・敷地に行って、本当に木密の地域に風が流れていないのか、

・どんな風が流れているか、実際に見てくる。

・違うアイディアがないか考えてみる。

・現状をシミュレーションしてみる。

・昔の街モデルで、時代ごとの風環境の変遷を追う

・木密で家が建てられてきた原理を理解して、乗り越えていくことが大事。

 

能上さん

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・全体のストーリーは、浸水対策として高床にする→高床を使って無冷房の小学校を提案、という流れ

・高床にするときに、建物を持ち上げるのではなく、地面を掘り下げてみたらどうか。

・掘り下げ方を、自分の欲しい風環境を生み出すように考えていく。

・ボリュームを小さくして、分散型を考えている→ひとつひとつの屋根のかたちを考えてみて、

 風を可視化しているとか、雨水をあつめて利用しているという提案となるとよい。

 

富山くん

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・もともとの超高層案を進めたほうがいいのでは。

 

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・設計プロセスをいったん作ってみる→それに合わせて設計もしてくる

・風のムラだけでなく、光など他の要素も複合的に考えた方が設計が進めやすいのではないか。

・光環境を考えるとしたら、スラブと壁を一緒に操作するのは複雑すぎる。

 たとえばスラブだけというように対象を絞って、アルゴリズムのような操作を考えたらよいのでは。

・ストーリーも同時に考える。それによって、デザインすべき環境が決まってくる。

 

小林さん

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・カーテンから考えた形状が、現案だと、ただファサードの外側に後からつけているように見えてしまう。

 建築の構成要素の本質に結びつくようにできるとよい。

・現案は図書館としているが、プログラムも再考すべき。

ファサードにシステムを組み込むことも考えてみる(冷却装置)→研究所とか…

・プログラムと敷地をつなげるストーリーをつくる

・パースより、まずは模型をつくってみる。

 

一杉くん

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・擁壁をはがすのかはがさないのか。

 

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最終講評もだんだんと近づいてきましたね!

この調子で、これからも頑張ってください!

皆さんの作品を楽しみにしています!