高間三郎様レクチャ+コンセプト発表

5/9(木)のスタジオ内容です。

本日は高間三郎様のレクチャの後、M1・B4のコンセプト発表が行われました。

 

まず始めに高間様のレクチャです。

「環境建築とエネルギー」
・環境建築と原油価格
1962年レイチェル・カーソン沈黙の春」が引き合いに出されるように、科学産業によって環境汚染が進んだ。
70年代の二度のオイルショック、80年の省エネルギー基準、90年代には温暖化が問題になった。

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・NEXT21
自然との共生、スケルトン・インフィル構造方式、住宅エネルギーシステムの開発がコンセプト。
この20年の技術進歩は電気機器・ネットワークがほとんどで、建築にはまだ反映されていない。
Phase1:リン酸形燃料電池、Phase3:水素供給燃料電池、Phase4:SOFCなど、時代に合わせて、燃料電池は高効率化してきた。
最近は主にスマート化・ネットワーク化が進められている。
 
・環境建築の要素
太陽・風・土・水・植物
 
・出雲ビックハート(シーラカンス
自然換気システム
自動制御によるダブルジャロジーが特徴。
 
・朝日町エコミュージアム
OMソーラーシステム
 
・宮城県立迫桜高校
OMソーラーシステム
集熱面積2500㎡は当時としてはかなり巨大なもの。
 
・TIO2
光触媒散水システム
 
・横浜市大共同利用棟
 
・地球のたまご
植生もつくった。
光触媒シートに水を流す。
空調なしのガラス屋根の建築。
 
・College of Art & Science, Doha, Qtr
ダブルスキンと換気塔が特徴。
水冷Wind Towerを提案したが、水が高く普通の換気塔になった。
幾何学模様の遮熱ファサード
 
・スペースブロック
CFD解析による通風スタディ。
輻射パネルによる冷房。

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・東京松屋ビル
風と光の井戸
大通りに面して室外機を出したくなかったので、換気塔を作りその内側に室外機を集めた。
 
・真壁伝承館
太陽熱・太陽電池
太陽熱を収集して鉄板を輻射パネルとする。
 
・金沢海みらい図書館
パンチングウォールによる日射制御と空調設備
開口率は12%ほど。
1/10模型実験や日射・照度シミュレーションを行った光環境デザイン。
本棚の下から床吹き出しの空調を行うことで、ダクトや吹き出し口が見えないながら快適な温熱環境。

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・森のオフィス
ZERO CO2
バイオマスと太陽光によるエネルギー供給。
 
○良い建築とは?
設計している身からすると楽しいものが良いのでは。
製作者が楽しんでいないと良いものができない。
 
続いて中島さんより、気候リサーチとM1の風課題・熱課題のレビューがありました。
 
まずM1のコンセプト発表です。
○大國さん

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オビカレハからインスピレーション。
オビカレハは木の枝に糸で膜を張り多様な温熱環境を作る。
斜めの壁を組み合わせる多様な日射環境を作り出す。
角度や高さをパラメータとすることで、日射環境だけでなく空間的な多様性も生み出す。
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中庭と斜めの壁をリンクさせた方が良いのでは?
開放空間を均質な温熱環境にするのはたくさんのエネルギーが必要。
開放系だからこそムラを生かす。
今年は形から一回スタディを突き詰めているのが良い。
まだ着地するのは早い。
上が尖っていると自然通風が起こりにくい。
 
○米澤君

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ガラスの入れ子建築の提案。
厚さのスタディをしてきた。
ガラスに厚みをつける代わりに、複数のガラスを重ね合わせる。
複数のガラスを透過させることで、熱的・光的に日射を制御する。
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実際にどうプレゼンテーションするのかが難しそう。
CG能力が問われる。
換気回数・内部発熱は設定していない。
妹島さんがトレドの美術館でやっているようなことを、熱的に掘り下げていく。
アクリルは熱が抜けるので温室効果が起きない。
空間のイメージを一緒に考える。
ガラスでやるなら、視覚的な面白さも徹底的に突き詰める。
 
○富山君

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ブロック群によるビル風の制御。
風の吹く空間・吹かない空間を作り、オフィス空間を豊かにする。
全体の密度感が一番風量に影響する。
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弱めたとしても風速が速いところでは4~5m/sにもなると働けない、ほとんど外部一緒。
風鳴りが起きそう。
外側の細かいのが風制御、内側の大きいのが空間として、役割分担がされすぎているので、もう少しグラデーショナルに。
まず風速何m/sに落とすのかということを決めてスタディしていく。
今のプランを街として再解釈すると、小さい住宅の内側に高層ビルが建っている配置ととれる。
通常と内と外が反転している様子。
環境以外の良さを考える。
 
○石綿さん

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川辺は風の通り道。
都市河川の上流・中流・下流をリサーチ。
各領域における風環境のスタディ。
上流は川が蛇行し、風もそれに従って流れる。
中流は川幅が広くなり、直線的になる。
下流は川よりも海風の影響が大きくなる。
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例年に近い取り組み方。
社会性からではなく、原理的なモデルから入ってみる。
上流・中流・下流で川の風の型が見つかるとよい。
ヒートアイランドを考えると海風をいかに陸に入れるかが大事になってくる。
マクロ的に行くかミクロ的に行くか早めに見切りをつける。
 
○小林さん

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風課題ではカーテンが作り出す風の流れをイメージした。
熱では放射ムラをテーマに、熱いパネル・冷たいパネルを配置し、様々な温熱環境の中でアクティビティを誘発する。
季節や時間の違いによってライフスタイルが変わるような提案にしたい。
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カーテンの話をもう少し進めてほしい。着地が早い。
カーテンが風を受け止めた瞬間に空間ができる、そこに風と空間は結び付くヒントがあるのでは。
空間的魅力と環境の魅力がリンクした時に一番グッとくる。その話を翻訳・整理してしまうとつまらなくなってしまいがち。
アルミが挟まれてラミネートされたカーテン。
カーテンそのものを使う、それを翻訳する、もしく風が作り出したカーテンのかたちを元に設計する。
ヨットの帆、テントになってしまうと身体感覚とかけ離れてしまう。
 
○小松君

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片流れの屋根の離散的集合体。
方位や仕切りの位置のスタディ。
仕切りの位置より屋根の位置のほうが温熱環境に影響が大きい。
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片流れであることの意義は。
まずは壁を考えずに片流れでスタディしてみる。
圧迫感を抑える寄棟ではなく、あえて片流れにする意義を明確に。
 
○北潟君
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ソリッドなものにヴォリュームをあけた時の風の挙動をスタディした。
柔らかい素材で空間を作り、変位を起こす。
構造計算まで含めて提案したい。
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構造解析までやり切れるのか。
やりたい空間のイメージが理論武装されていない。
空間のイメージは良いので、違ったアプローチからスタディをする。
軽い素材なので、屋台のような仮設空間のほうがイメージが近いかも。
 
○藤山君

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間伐材を利用して空間を作る。
間伐材を伐採した空間に建築を作る。
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スタディする対象を絞る。
木のシミュレーションをするのか、ストーリーから入るのかはっきりさせる。
 
○ちょう君
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密度に関するスタディ。
個体の密度によるバッタとイナゴの相変異。
戸建住宅が集合すると形態を変えていく。
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これが建築に翻訳できるバイオミミクリーなのか疑問。
内部環境をやるのか配置による外部環境をやるのかはっきりさせる。
 
○アリスさん

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ギリシャの地中建築にインスパイアされた。
地下空間の通風のスタディを行った。
まず最初に深さのスタディを行い、続いて壁面の傾きのスタディ、空間の複合のスタディを行った。
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早めに地中温度をシミュレーションに取り入れた方が良い。
具体的な場所を決めて早めに進める。
村上先生の本を参考にする。
 
 
続いてB4のコンセプト発表です。
 
○能上さん

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緑化・土から離れてヴァナキュラーの視点から入る。
小学校に着目。
年の差が大きく、様々な子供がいる中で、土着的な部分と画一的な部分が共存する建築を設計する。
入れ子空間のイメージ。
寂れた商店街のある街が敷地。
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新築かリノベか。
夏と冬のどちらが子供にとって厳しい環境かイメージすること。
場所性が大事だから、早めに場所を決めること。抽象的な議論から早く抜け出す。
 
○矢吹君

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集合住宅がテーマ。
各気候帯におけるマンションの形態を探る。
東京。福岡・長野の3都市をベースに考える。
東京は南側アクセスのメゾネット。
福岡は夏北から風が吹き、冬の日射量が少ない。
長野は東西の風が吹くので、東西に並ぶプラン。
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インダストリアルヴァナキュラー。
マイナーな操作になってしまうのは一住戸しか考えていないから。
URの団地再生の例を見るべき。
リノベーションにこだわるべき。
 
○モウさん

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熱帯モンスーン気候のフィリピンの島の観光計画。
木造ではなく石積みの建築が多い地域。
自転車で2~3時間でまわれる計画。
単なる一つのホテルではなく、小さな建築の集合体を設計する。
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台風に耐える形。
乾燥体なら厚い壁の恩恵を受けられるが、湿度が高いとジメジメしてしまう。
台風に耐えるためだけに1mの壁にすると、他のデメリットが大きい。
 
○山本君

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日本で一番暑い気温を記録し、伊吹おろしの吹く岐阜県多治見市。
伊吹おろしを広域で利用する。
平野の岐阜と比較して、盆地の多治見は冬の気温がかなり低い。
多治見は昼夜人口が少ない。
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岐阜と多治見を行き来する交通は。
一山越えて大きな気候変化があるならおもしろい。
ヒートアイランドを扱えるだけ夏熱がこもるのか。
日本一暑い理由をもう少し深く掘る。
地形的な問題を建築で解決するのがヴァナキュラー建築。現代に翻訳するとどうなるか。
 
 
最後に講師の方からの総括です。
<川島さん>
M1は具体的な形に落とし込もうとしていて良い。
ツールを使って落とし落とし込んでいく。
B4は抽象的な議論が多く、浅い印象。
共通認識を早めに片づけて、どこを掘り下げるのかが大事。
 
<谷口さん>
M1はスタジオとして理想的に進んでいる。
そろそろ敷地を決めて建築に落とし込む際に、普通にありふれたものになってしまわないように。
B4は広く手を出しすぎている印象。
敷地を決めて具体的な建築を考えよう。
 
<前先生>
B4は基礎的な建築的なリサーチが足りていない。
遅れている人は具体化を急ぐ。
M1は概ねいい方向に進んでいる。
操作が小さいほうが最終的に受ける。足し算的に操作を加えていくと浅くなってしまう。
 
以上です。
長い時間お疲れ様でした!
次回は5月14日(火)に設計案エスキスです。