5月16日(木)のスタジオは、以下の内容でした。

 ・松本仁様レクチャ

・講師エスキス(B4・M1)

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□松本仁様レクチャ

Environment×(Design + Operation) ≠  Engironent Desing + Operation

 

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本日はこれまでのプロジェクトをDesignとOperationに分けて説明する。

環境とかたちといったことと絡めてレクチャをする。

 

Design

建築デザインに関して、自身がやっていない興味を持つプロジェクトと、自身が関わったプロジェクトを紹介した。

 

①自身がやっていないが興味を持つプロジェクト

環境とかたちの関係性といった意味で示唆に富むプロジェクトを紹介した。

以下、例をいくつか述べる。

 

ノーマンフォスターのロンドン市庁舎

日射に関しては、北に傾けることで形態係数を小さくしている。

表面積が小さく取れる球体を模した形を採用した。

 

ホプキンスの議員会館

初めは自然換気を考えていたが、屋根に埋め込んだ機械換気を提案。

下に行くほど柱は太くなり、ダクトは細くなるため、それらを組み合わせて均一な太さの柱とした。

 

レンゾピアノのThe shard

先端の細くなるデザイン。

先端が二つに割れているところを利用できないかと考えた。

形ありきでそれを有効に使う。

 

②自身がやったプロジェクト

松本様自身の関わったプロジェクトを紹介。

世界的に著名な建築家と数多く協働しており、それらの例を紹介。

創造的な現場でのエンジニアの関わり方に関して多くのお話を聞いた。

設計案を解析し改善案を示す時もあれば、

Engineering Excuseといって計算ツールと閾値を整備した上で

設計者にかたちを任せるといった関わり方の紹介もあった。

 

Operation

設計に関わってきて、次第に建物のoperationに興味が移ってきた。

構造の人間なら建物が建ちつづけることが職務だが、

設備の人間にとっては、建物を動かしてから想定通りに動くかどうかが重要と感じている。

 

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[質疑応答]

 

清野

・Arupにおいて、Building physicsとはどういう部署か。設備との違いは。

 BPは設計をしない部門である。

設計グループで難題が生じたときに相談に行くような部署であり、

エンジニアリングの力で難題に対して対応する。

 

・Engineering excuseという言葉が印象に残ったが、最終的に設計者が決めるというケースはどのくらいあるのか。

 こちらで提案したかたちが採用されることもあるが、かたちの最終決定はデザイン側であるのが基本的。環境だけでかたちは決まらないと思っている。

 

 

高瀬

・閾値を決めるという話があったが、その閾値を定める際、どうやって情報や根拠を集めてくるのか。

 法制度はかなり参照にする。

ロンドンの法規には、使える基準がたくさん転がっているイメージである。

それに対して日本の法規ではそういった点が弱い。

 

 

末光先生

・環境でかたちは決まらないという話があったが、ザハのようにかたちを決めてしまってから設計を投げるのと、三分一さんのように環境の要素を見込んで設計をするのと、どちらがやりやすいか。

 ザハのように強力な設計思想がある設計者は、うまく行くようで

解決するゴールがはっきり見えているのである意味ではやりやすい。

仕事の達成感も得られる。

一方、環境的に「こうなるはず」というものを持ってこられると困ってしまうこともある。

こちらに任せてほしいと思うことも。

 

・海外と日本のエンジニアの違い

 海外のエンジニアは入り口でそもそも設備から入ってくるため、

絵で表現することができない。

日本では、建築から入ってくるため、絵で表現することができる設備設計者が育つと思う。

 

・これから環境コンサルになりたいと思う人に対して、なかなかモデルとなる人物がいないが、

これからどういったことが必要か。

 Operationを考えることが大切だと思う。

設備設計者は動かしてみてどうか、ということが大切。

建ってしまって終わりではなく、どのように働いているか、自身で責任を持たなければいけない。 

 

川島先生

・閾値は、これをやったら不快だというレッドカード的な閾値と、これに届けば気持ちいい、という閾値があると思うが、どう思うか。

 極端なことを言うと、ほうとうのレストランが一つの例。

夏に暑くても、わざわざそのなかでほうとうを食べるのだからそれでいい、という閾値。

それで空調なしで運用ができるようになる。

 

 

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レクチャ終了後も、多くの人が松本様に質問をしに集まっていました。

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レクチャにつづいて、グループに分かれてエスキスを行いました。

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以下、概略です。

 

孟さん

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模型スタディを行った。

平面で8m×14mのボリュームを考えた。

壁の厚さは1m、2階建てで4部屋入るユニットとなり、

それらの配置を考えている。

直線状に並べた案、円形に並べた案、ぱらぱらと配置させて中庭を囲む案などを考えた。

 

・周辺のわからないプレゼントなっているため、周辺環境を示すようにしたほうがよい。

・具体的な敷地を決めた方がよい。

・設計の手がかりとなるものは海以外にないのか。

 

 

一杉くん

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敷地を考えてきた。

根岸の斜面地で、うねるような道のある面白い敷地を見つけた。

 

・近くにあるNTT社宅の空き家もうまく利用できると面白いのではないか。

・丘の上と下で分断されてしまっている。それらをつなぐような提案ができたらよい。

 

 

山本くん

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美濃焼きの工場が多く分布している地域に興味を持った。

工場と幼稚園が隣接している場所を敷地として考えている。

両者のコンプレックスとして、何かできないか。

陶器工場の登り窯を利用して、換気や冬の暖房を設備的に考えられないか。

 

 

石綿さん

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バイオミミクリーのリサーチから、シマウマとトンボの例を見つけた。

シマウマは、表面の白黒の部分で表面の温度が異なってくるため、

体表で微少な対流が生まれ、シマウマの快適感に寄与しているという。

トンボは、羽の表面の微少な凹凸が渦をつくりだし、気流を生み出している。

特にシマウマの例を適用することを考えてみたとき、

表面の色を一戸一戸で塗り分けることで、対流を生み出せないか。

 

・シミュレーションで試してみるとよい。

・効果のあるスケールを決定できるとよい。

・公園なり宅地なり、対流を起こす公園を都市に埋め込むことで、都市全体の気流を良くする。

・血行のイメージ。現状の都市で風が流れていない場所で、ツボを刺激するように気流を良くする建築(群)を設置する。

・現状の都市の解析と、気流を起こす建築(群)(シマウマの原理)の解析を進める。

 

 

 

大國さん

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ななめの壁をどのような空間に生かせそうか考えてきた。

スケールの操作、視覚的な可能性、蓄熱の利用等を考えた。

干物工場→斜めの壁面に干物を干す。保存しておくのは涼しい温熱環境となる部屋と使い分ける。

住宅→夏と冬でアプローチの方向を変える。

温泉とプール

植物園

 

・問題解決型とするのが楽ではある。現状で環境の悪い建物にV字を適用してみるなど。

・スケールの操作をもっと大胆にしたらどうか。

・屋根と壁の日射の当たる量の違い。

・今はガラスとコンクリートを組み合わせているが、全部ガラスorコンクリートでやるとどうなるのか。

・干物工場は特殊解すぎるのでやめた方がいい。

・伊東さんの台中のオペラハウスと同じ原理で構成できる。

・天候や体調です住み分けられる住宅になれば面白い。

 

 

小松くん

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密集地域における通風のスタディ

屋根のボリュームのスタディ。

屋根に凸凹をつけることで、下の空間の通風を操作する。

 

・アルゴリズムの原理を決めて、木密に適応させていく。

・家の中での多様性以上の話、例えば木密に風を通す等。

・そこから発展して、木密が都市のラジエータになるなど、いくらでも話は膨らませられるはず。

 

アリスさん

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タワーとヴォイドを使って換気システムを作りたい。

地下水を用いた気過冷却。

 

・リングが二つだけでは面白くならないので、リングの数を増やして、それが都市的に広がっていく様子を考える。

・リングの素材・熱容量を変えることで温熱環境の違いを生み、気流を起こす。

 

米澤君

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FlowDesignerで2枚以上のガラスの透過を計算できない。

まずはDIVAで熱環境を解析。

 

・熱のSimができないのは痛いから、ガラスにこだわらなくてもいいのでは?

・何らかの単純化が必要ではないか。透過率のみ設定等。

・あくまでも考え方のデザインだから、近似化を上手く設定する。

・ガラスの床でいいのかは最終的に問われてしまう。

・ガラスでやるなら平面で壁に特化したほうが良いかもしれない。

・ガラスではなく、何かしらの透過性をもった素材ではダメなのか?

・SOMのイェール大学図書館を参考にしてみる。

・プログラムも早めに決めた方が良い。

・住宅というよりは、もう少し公共性を持ったプログラム。

・どんどん設計条件を絞っていく、どの季節に気持ち良くなるのか。

 

小林さん

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風の可視化、カーテン。

 

・前スタジオで、どんな建築を作りたいかをまずイメージ。

・ふわっとしたものではなく裏付けできるもの。

・裏付けだけではつまらなくなってしまう。

・膨らむということが持っているロジックと、快適性をつなげれないか。

・建築的なイメージを常に持って進める。

・ロジックだけでは決まらない。

・始めにパターンを列挙する方法と、アルゴリズム的に増えていく方法。

 

富山君

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風を制御する高層ビル。

ボリュームを密にして再Simした。

 

メディアテークの設備図で、風を均等に飛ばすように、整流板がたくさんある。

・目的と経験を具体化していく。

・単純なプログラムに落とし込んだほうが上手くいくのでは。

・スタディの仕方が単純/複雑で極端すぎる

 

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皆さん、だんだん計画が具体的になってきましたね。

中間発表もだんだんと近づいてきました。

この調子でがんばってください!