風のSimlation + Workshop

4月16日(火)は、リサーチの進め方に関するレクチャーから始まりました。

高床式住居の「ロングハウス」を例に、気候分析とその土地の建築から、どういった建築の「型」を見いだすのかといった説明をしました。

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みな講義を聴く姿が真剣ですね!

 

次のトピックは、本日のメインテーマである風の解析についてです。

風で「かたち」を考える際のヒントとなる、風の流れを支配する物理現象についてレクチャーを行いました。

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ベルヌーイの定理、レイノルズ数と圧力損失、風圧係数などキーワードを提示しました。風の流れ方として、正圧から負圧に向かって空気が移動するということをお話しました。

 

それを受けて、iPadアプリのWind Tunnelを利用したワークショップを行いました!まず風の流れをイメージしたスケッチを各自描いてもらい、その風の流れを検証するというステップでした。

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「思ったように風が流れない」といった意見が多く聞かれ、皆、思ったように風を流すのに苦戦しているようでしたね。

風の入り口だけでなく、負圧になりそうな場所に出口を設ける、ということが鍵となります。

 

また、風解析ソフトのFlow Designerの使い方をデモし、皆に実際に「採風塔を持つ住宅」モデルで風の解析をしてもらいました。

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複雑な操作もあるなか、皆解析まで終えることができました。

採風塔の効果をFlow Desingnerで可視化することができ、Simlationツールの効果が実感されたのではないでしょうか。

 

解析が一段落したところで、個人でWind Tunnelを使ったワークショップの発表にうつりました。 

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↑ 孟さんの作品

開口の位置、スラブの位置の操作をすると面白そうですね。

 

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↑ 一杉くんの作品

全体に大きく風が循環していますね。

 

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↑ 小松くんの作品

塔の部分が有効に働いていますね。

 

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↑ 大國さんの作品

屋根からうまく風を取り込めていますね。

スラブの位置、大きさなどで1Fと2Fの風の流れのバランスが操作できそうですね。

 

最後に、木曜のリサーチ発表に向けて、グループごとにTAエスキスをしました。

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皆、だいぶリサーチが進んできたようですね!

木曜日の発表を楽しみにしています!

 

 

130411 前スタジオキックオフ

 

 

 

前スタジオ2013、いよいよ始動です。

プログラムは

 

 

1.前先生からのレクチャ

2.末光様からのレクチャ

3.ecotectに関するレクチャ

4.ecotectのデータを見ながら、世界の気象クイズ

5.気候帯ごとのヴァナキュラー建築の説明

と、いきなり盛り沢山でした。以下、要約をまとめます。

 

 

 

1.前先生のレクチャ

 

 

前先生からはエンジニアサイドの教育者としてスタジオ受講生に大切にしてもらいたい、期待したいことを話していただきました。

以下はレクチャのおおまかな内容です。

 

エンジニアサイドの教育者として、今回のスタジオで大事にしたい事は以下の二点。

 

 

データに想像力を

原理原則の探求

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<データに想像力を>

 

 

「敷地調査に行ってみないとわからない」ではなく、データから何を読み取り、そこからどういった物語を紡ぐのか。

かつて、情報がとても少ない時代にヘロドトスが書いた地図は完璧ではありませんでした。でもそこには人々をまだ見ぬ異国の地へ思いを巡らせる想像力があった。

 

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シミュレーションについて言えば、スーパーマリオは現在では考えられない低スペックのCPUとメモリで全世界の人々を夢中にした。いつの時代にもコンピュータの能力が足りないという問題はある。大事なのはその限界の中でいかに工夫し、おもしろいことをできるか。

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<原理原則の探求>

 

 

ヴァナキュラー建築の形が環境によって決まっていると考えるのはよしたほうがよい。ただし、表層をなぞっただけで「環境でカタチは決まらない」という結論に至るのはあまりにも尚早。表面には出てこないものから学ぶためには原理原則に基づく探求が不可欠。

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表層ではなく、原理原則から学ぶことで成功した例として「空を飛ぶ」があげられる。何世紀もの間、人類は鳥のはばたきを模倣することで空を飛ぼうとしていた。しかし、結局、飛行に成功したのは自然の模倣をやめたライト兄弟

「はばたき」という行為に現れる「表層」ではなく、推力と揚力という「原理原則」に基づいた設計が人類に空を飛ぶことを可能とした。

 

 

 

 <結び>

建築を突き詰める

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自動車のエンジンにおける燃費、データセンターにおける空調などはミッション・クリティカルなので、CFDなどを駆使して突き詰めた設計をしている。建築だってまだまだ突き詰めた設計をできると思っている。

このスタジオには「データに想像力」を持ち、「原理原則の探求」の末に「突き詰めたカタチ」というものを期待している。

 

 

末光様のレクチャ

 

 

 

末光様からは自身が建築に対して考えていることを自身の作品の紹介を通して話していただきました。

以下はレクチャのおおまかな内容です。

現在、設計で考えている建築について

1.自然の秩序に従う美しさを持つ建築

2.人のふるまいを自然に誘発する建築

3.自然の循環系の一部となるシステムを持つ建築

 

 

 

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それぞれの作品を設計プロセスにおけるシミュレーション、実験について織り交ぜながら説明していただきました。

1.Kokage 「木陰」の快適性を翻訳する

 

敷地にある庭の快適性をいかに取り込むかを考え、柱と頬杖で構成される10本の構造ユニットで全体を構成した。諸室の広さによって構造ユニットの梁部分の長さが決まり、それに対応して、頬杖の長さも変化する。構造ユニットに水を循環させ、輻射冷房システムを採用。

竣工後、提案した輻射冷房システムがどれだけ効果があるのかを実測

 

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2.Kubomi 「窪み」の快適性を翻訳する

 

 生垣の多い地域で、二種類の半地下状「窪み」を持った住宅をデザインした。地中の温度安定性と窪みのプライバシーをリンクさせて解いている。サーモスラブという地中蓄熱型の床暖房を採用。

スタディでは模型を使って、半地下による温度の振る舞いを実測。

 

3.地中の棲処 「地中」の快適性を翻訳する

 

 急な斜面地を逆に利用した住宅。立体的な測量など、詳細な実測によって場所ごとの性格を見抜き、住宅のプログラムを当てはめていった。夏であれば、開口を向けている方向から風が吹くと建物を通る間に風が冷やされていくのが実感できる。表面の土壁仕上げが雨を保水し、表面温度を下げてくれる。

建物の配置と風の通り方の違いを可視化

 

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4.葉陰の段床 「葉陰」の快適性を翻訳する

 

小さなプレート状のルーバーによって住宅に微気候を作る。蒸散作用をルーバーに採用することで葉陰の快適性を翻訳した。一見ランダムに見えるルーバーパネルの配置は、光という環境要素を考慮したアルゴリズムによって決められている。

スタディでは1/5の実際に使用する多孔質素材で作ったルーバーのモックアップに水を含ませ、表面温度の変化を測定。5℃ほど下がることを確認。

 

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5.Birdy Terrace

 

クールスポットのネットワークをつくる。緑地に囲まれた敷地に大きな箱と小さな箱を配置、テラスがそれらをつなぐ構成。コンクリートと木造の熱容量の違い、地下と地上の温度状況の差を組み合わせた設計。

周辺から風を取り込みうる建物配置をflowdesignerを用いて検討

 

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6.九州芸文館

 

クスノキと建物を共存させるデザイン、樹木の根を傷つけないための構造的配慮、ハンモック状の床と天井。

 

スタディでは季節による樹木の影のあり方をシミュレーション。樹木をうまく使いながら日射の遮蔽、取得を考えた。

 

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3.ecotectに関するレクチャ

前先生のおっしゃっていたデータから想像力を得るためのツールとしてTA清野からectectに関するレクチャがありました。

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詳細は省略しますが、建築設計のヒントとなりそうな、機能がたくさん紹介されました。受講生の方はうまく使いこなして、想像力をかきたてるようなデータを見出してください。

 

4.ecotectのデータを見ながら、世界の気象クイズ

 

続いて、ecotectで表示されるmonthly dataを使って、世界の気象あてクイズをしました。

皆一生懸命考えていました。

 

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頭ではわかっていても実際に世界各国の一年間の気象データを比較すると、いかに気象の変化に富むのかが見えてきますね。

私達が普段当たり前に思っている建築を設計する上での前提条件ももしかしたら絶対的なものではないかもしれません。

 

 

5.気候帯ごとのヴァナキュラー建築の説明

最後にTA中島から来週木曜までの課題について説明がありました。

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課題は、4.ecotectを使った気候あてクイズで出てきた「気候帯特有のヴァナキュラー建築、生物を調べてくる」というものです。面白い案を楽しみにしています。

 

初日からだいぶハードな一日でしたね。

前スタジオはツールをたくさん使うので、4月中にしっかり覚えることがその後のスタジオのために重要となってきます。TAとしてもサポートしていくので、皆さんがんばりましょう!

 

サステナブルデザインスタジオ(末光+前スタジオ)始動!

修士の課題はSUEPの末光先生と前先生の共同スタジオとなります。

 

テーマは「自然の合理性に基づく新しい建築デザイン ~光・熱・風がつくり出す建築のかたち~」

 

■趣旨

建築は何らかの合理性に基づいてつくられます。

近代建築における合理性とは、機能であったり、コストであったり、工法であったりと、人工的な合理性(人がつくり出した理屈)に基づくものが中心的でした。モジュール、プレファブリケーション、◯◯工法と言われるようなものは全てそれにあたるはずです。人はそこにうまれる均質な秩序に人工的な美を感じてきたのです。

しかし、自然界に目を向けてみると、それとは全く異なった位相の合理が存在します。一見、グニャグニャに見える樹木の形であっても、実は全て合理性のある形をしています。ここにおける合理とは、複雑なパラメーターの中でそれぞれの理屈のバランスで生まれる合理性と言えます。それは、重力であったり、日光との関係、根と自重の関係や、隣合うものとの相対的な関係であったりします。また、人はどんな形であっても、自然界のものをみて美しいと見抜く能力を備えていますが、それは、その美しさの背景にある合理性を瞬間的に把握しているからとも言えます。自然界の複雑な合理と比ると、私たちが今まで見てきた建築の合理性とは、無限にある可能性の中の一部にしかすぎないのかもしれません。ここに近代建築を超えるヒントが隠されているのではないかと考えています。

新しい時代には新しい価値観が必要になります。

今までの狭い合理のフレームを拡げてみた先にはどんな姿の建築があるのでしょうか。

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(C) SUEP.

左上:風解析と壷型空間の形状のスタディ(光壷の家) 左下:発煙管による簡易風洞実験と流線形スラブの形状検討(松山の住宅)右上:集熱シミュレーションによる分散屋根形状の配置と勾配検討(向日居) 右下:風解析と地下平面形状の検討(地中の棲処)

 

■課題概要

前半(~中間発表)

① シミュレーション:環境シミュレーションソフト/Ecotect(気候分析)FlowDesigner(風・熱解析)Diva(光解析)を用い、建築形態が持つ環境性能のスタディを行いながら、シミュレーション技術を習得する。

②環境実験 :環境測定ツール(サーモカメラ、風速計、放射温度計等)を用いた簡易な環境実験を行い、建築形態が持つ環境性能を把握するスタディを行います。

③リサーチ :自然の合理性に基づく形のヒントとして、BIOMIMICRY(自然環境が生み出す植物や動物の形状特性)に関するリサーチを行います。

以上3つのアプローチから自然の合理性に基づく形の原理を発見し、空間モデルを作成する。この時点では、具体的な敷地を持たない抽象モデルとしての提示とする。その際、必ずシミュレーション結果や測定データなど空間の形の根拠を具体的に示す。

※①~③に関しては、B4 の前スタジオと連携し、情報を共有しながら進めます。

後半(中間発表~最終講評)

上記で作成した空間モデルを元に、実際の敷地で建築を設計する。敷地の環境コンテクストの特徴を生かしながら、居住空間の快適性や都市の問題の解決につながる建築の提案を考える。

 

■ ミニレクチャーシリーズ

講師:末光弘和(SUEP.)/前真之(東京大学)/川島範久(日建設計)/高間三郎(科学応用冷暖研究所)/羽鳥達也(日建設計)/中川純(レビ研究室)/竹中司(AnsStudio)/前研究室学生によるシミュレーションソフトのレクチャー

※講師の都合によって多少変更になる可能性があります。

 

■履修条件・初回集合場所

修士学生対象 定員制限なし

4/11(木) 18:00(12号教室)以降 毎週火曜13:00~ 木曜18:00~ エスキス

前スタジオ2013始動!

今年もスタジオ課題が始まりました!

今年度から、スタジオ課題の体制が大きく変わり、学部と修士で別々のスタジオを設けることとなりました。

学部のスタジオは"B4スタジオ"のカテゴリーで、修士のスタジオは"M1スタジオ"のカテゴリーで分類します。

 

今年度のB4前スタジオの課題は、「これからの都市におけるヴァナキュラー建築」です。

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 ■趣旨

 ヴァナキュラーという概念は、バーナード・ルドフスキーによる1964年のMoMAにおける展覧会とそのカタログ『建築家なしの建築』によって広く知らしめられた。それは、「現地調達」の材料で「非職業的」生産による「風土性」をもつ「非商品的」建築にフォーカスし、近代建築へのカウンタープロポーザル、工業化社会に対する危惧として提出され、実際、経済原理の波が押し寄せた現代の街並みは大量生産品に埋め尽くされ、画一的なものになってしまった。それとほぼ同時に、工業化製品の最たる例である空調設備の登場・普及によって、温度湿度は自由に制御できるようになり、建築自体に「環境制御装置」として側面が急速に失われていったのである。しかし、インフラストラクチャーが永久に維持され、無限にエネルギーが供給されるという幻想が崩れ去りつつある現在において、果たしてそのような建築は次の世代に住み継がれていくのだろうか。

 

 本スタジオでは、ヴァナキュラーの「風土性」という側面を工学的なアプローチから鑑み、まず、気候や地形といった人の活動を長きにわたって規定してきたものに向き合い、これからの都市のおける建築を考える。確かに異なる風土を定量的に見直してみることは、画一化した建築に差異を与えるきっかけとなるだろう。敷地は熱帯雨林気候から氷雪気候まで、様々な気候帯を扱い、日本国内に限らず世界中とする。気候と建築の関係を読み解く手がかりとして、非空調域としてのヴァナキュラー建築を環境工学的に検証してみることは効果的なアプローチとなるだろう。

 一方、ヴァナキュラー建築の「現地調達」という側面は、社会の前提によって、その意味が特に変容する。工業化製品がもはや日常的なものとなった現代において、ごく普通の産業施設という意味でインダストリアル・ヴァナキュラーという言葉も可能かもしれない。ゲーリー自邸はその先駆け的事例だと言えるだろう。限界集落のような場所では、エネルギーの「現地調達」も考えることになるだろう。

 ヴァナキュラーという概念は、気候や地形という変わらないものと、ライフスタイルや科学技術などの日々変わるものを内包し、人口減少時代のストックの生かし方から新興国の人口過密地域の建築のあり方まで、扱う地域によって全く異なる提案が生まれるだろう。

 パラダイムが大きく変わろうとしている現代において、設計ツールとしてシミュレーションを用い、不変な物理現象を扱い、風や熱、光のふるまいを可視化しながらスタディを行うことは、不安定な時代においても住み継がれる建築をつくりだす可能性を高めてくれるはずである。ヴァナキュラー建築を参照しながらも、単なるノスタルジーに陥らない現代の技術・状況に向き合い、建築が持ちうる社会的役割をも広げる提案を期待する。

※参考文献 建築家なしの建築/B・ルドフスキー『驚異の工匠たち──知られざる建築の博物誌』(渡辺武信 訳、鹿島出版会、1981)/三宅理一「インダストリアル・ヴァナキュラー」(『新建築』1983年5月号、所収)

 ■課題

1:住宅など、ライフスタイルを想定することのできるものを設計すること。

2:気象分析ツールEcotectを用いて、気象データを分析し、その土地の与条件をしっかり把握したうえで、設計に臨む。

3:温湿度・風・光環境測定器を用い、自身の環境要素に対する感覚を数値として把握する。

4:風と熱の環境シミュレーションソフトFlowDesignerを主に用い、建築形態が持つ環境性能を把握するスタディを行いながら、シミュレーション技術を習得する。必要に応じて、風洞実験やモックアップを作っての検証も行うことができる。

■履修条件・初回集合場所 学部生対象 定員制限なし 4/11(木) 18時(12号教室) 以降、毎週火曜13時~、木曜18時~にエスキス(状況により変更もある)